↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第2話「生物部、人権、特殊性癖」

「私、なんか吸血鬼らしいの」


「へー」



 夏休み終盤、カーテンびっしり、冷房ガンガンの生物部。


 突然のレンカの報告は驚くほどあっさりと流された。


 後輩達も特に反応無し。


 部長にいたっては「まあそうでしょ」と言わんばかりの一瞥を向けただけで無言で作業を続行している。


 そんな彼女の様子にレンカはご立腹だった。



「ねえ部長、私が吸血鬼なことより金魚の餌やりの方が優先されるの? 吸血鬼よ? 可愛い可愛い姫宮レンカが実は人外なのよ?」


「あなたの言ってることは当たり前のことなの。1+1=2ですらない、1=1って言ってるようなものなんだから」


「……え、部長知ってたの!? 私が吸血鬼なこと!? いつ!? どこで!?」


「1ヶ月も見てたら分かるに決まってる」


「いやいや、そんなわけないじゃない! そうよね!?」


「いや……まあ、姫宮先輩、人間じゃないとは思ってましたけど……」


「切り傷とか秒で治してるし……」


「クッソ、ゾンビだと思ってたんだけどな……」


「だから言いましたのよ! レンカ先輩はいっつも日傘なんですから!」


「待って、今お菓子のやり取りが発生してない? それギャンブルよね?」


「一時の享楽は見逃されるんだよ、レンカちゃん」



 傍から見てもだいぶ吸血鬼だったらしい己にうなだれるレンカ。


 否定しようにもその頭の中には吸血鬼っぽい思い出ばかり浮かんでくる。


 購買から戻ってきたミハネはそんな彼女の横にお昼ご飯の明太子サンドと紙パックのりんごジュースを置き、それから餌用のレッドローチの様子を見ている部長へ声を掛けた。



「ところで、これでレンカちゃんが人間でないことは確定してしまいましたが……結局、扱いの方はどうなるのでしょうか?」


「何も変わらないよ。別に人間しか部員として扱わない、みたいなルールもないからね。龍娘、とかだったら話も違ったけど」


「部長、爬虫類好きですもんね」


「ねえ私飼われる前提じゃない? 獣側の扱いじゃない?」


「そっち側だよ、実際」


「人権! 人権を主張するわ!」


「だから人間じゃないんだよ、あなたは」


「レンカ、エサクレ」


「あ、はいはい。ちょっと待ちなさいな」



 おそらくミハネ有する人間を除けば生物部で一番レンカに懐いている動物であろうアオダイショウのへびおに呼ばれ、レンカは一旦自らの人権運動を停止する。


 そしてそそくさと準備した彼女は、ケージの中の餌場的なエリアにそっと湯せん済みの冷凍マウスを置いた。



「ほら、へびお。これ好きでしょう? たんと味わいなさいな」


「アリガト。アト、ヨクカンガエタラ「ヘビオ」ッテニンゲンデイウト「ヒトオ」ダヨナ。アリエナイダロ」


「言われてみるとそうね。改名するの?」


「イヤ、オレハキニイッテルカライイケド」


「そうよね、自分の名前ってよっぽどじゃなければ好きになるもの」


「そんな堂々と話しておいてよく人間ヅラ出来ますね姫宮先輩……」


「え? いやいや、みんなよく言ってるじゃない。「何となくペットが言いたいこととか分かってくる」って。それの一例みたいなものよ」


「いや、明らかに世間話的なそれをしている雰囲気では……?」


「するでしょ、それくらい」


「しませんけど」


「だって。人間って厳しいわね、へびお」


「それはもう人外の発言だよ、姫宮」



 レンカは部長や後輩達の塩対応に頬を膨らませ、机に突っ伏したまま「大丈夫ですよ、今日もレンカちゃんは多次元一の美少女です」「キニスルナヨ」と食事中のミハネ、へびおに慰められる。


 ペット達の一通りのコンディションチェックを終えた部長は彼女の正面に座り、お弁当箱を開けた。



「ところで、あなた確認テストは大丈夫? 吸血鬼よりそっちを心配するべきだよ」


「あら、それなら大丈夫よ」


「まあ、流石にそろそろ勉k「マークシートだもの」


「前言撤回。あなた期末何位だったっけ?」


「20番目くらいよ? 下から数えて」


「高二、これより下が20人もいるの?」


「大丈夫ですよ、部長。レンカちゃんには学年1位の私がついていますから」


「あなたはあなたで勉強してるの見たことないんだけど……」


「はい。していませんし」


「これより下が250人いるの?」


「才能って、人生のフリーパスですから」


「痛い目は見ないだろうけど、痛い目は見て欲しいかも」



 小柄な部長の悪態に「見ないでしょうね」とミハネはアップルティーの入ったプラコップを揺らしながら微笑む。


 その隣ではお昼を食べ終えたレンカが「ごちそうさまでした」と手を合わせ、見事なコントロールでゴミを燃やせるゴミの箱へと放り込んだ。


 バカほど身体のコントロールは上手い、コメディの鉄則である。



「レンカちゃん、もうお腹いっぱい? デザートとかいる?」


「デザート? もちろん別腹に決まってるでしょ。いくらでもいけるわよ」


「了解。なら『かぷかぷ』しよっか」


「待って。部室はグロレズディープキスは禁止だから。っていうか人前でやらないで」


「いつの間に禁止になったんですか? どうして?」


「あなたのせいに決まってるでしょ。教育に悪すぎる」


「……仕方ありません。レンカちゃん、私、お手洗いに行ってくるね」


「? なら私も行こうかしら」



 わざとらしくその場を後にするミハネと、それについていくレンカ。


 彼女達の背中を見送った後、部長は「これだから特殊性癖は」と小さくため息を吐いた。



「でも部長のフォルダの中、ドラゴンと車のやつで一杯ですよね」


「DCSは一般。誰が何と言おうとDCSは一般だから」


「いや、人のこと言えないですよ、流石に」


「うるさい。そもそも……っていうか大体ドラゴンカーセッk



 続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。