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隣に住む高嶺の花のクラスメイトは俺にだけ世話焼きな幼馴染のソングライター  作者: 月城曇


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5/7

初めての距離の近い友達

「いらっしゃいませ!はい四名様一時間コースですね!」


どうしてこうなった……駅前のカラオケボックス、俺は目の前でテンション高めに会話している三人を眺めながら思う。


路地裏の前で鉢合わせた俺たちはせっかくなら四人で遊ぼうとカラオケボックスに行くことになった。


「いつまでうなだれてるんだよ高野、どうせ勉強ぐらいしかやることないだろ? ほれドリンク」


「まあ、そうなんだが……」


 香織と楽しそうに話す美穂に自然と視線がいってしまう。締め切り大丈夫なんだろうか、そしてなにより彼女が本気で歌うことには少なからずリスクもある。若者を中心に彼女の歌声はネット上でかなり人気があり、顔出しはしてないとはいえバレたりしないだろうか。


(こうなったらなるようになると思うしかないか)


 もしも時のために上手い誤魔化し方を考えておかなきゃな、とため息をついて指定された部屋に行くためにエレベーターで二階へ向かった。


 駅前のカラオケボックスは外から見るとこじんまりとしているが、内装は中々綺麗で部屋もそこそこ広く四人入っても全然狭くなかった。設備も最新のものでおまけに部屋の中央の長机の上にはサービスのお菓子まで置いてある。


「それじゃあ、誰が一番最初に歌う?」


 香織がマイクと曲予約の機器を渡しながら言った。


「はいはーい私が歌いたいな」


 そうして手を挙げて名乗り出たのは美緒だった。俺は思わず大丈夫なのか?という視線を送る。すると美緒は「任せて」と小さく呟いて機器をいじって曲を予約し、マイクを手に前へ出る。


「な、雪乃さんってどれぐらい歌上手いんだ?」


 隣でメロンソーダーを飲んでいた篠崎が俺に耳打ちするように聞いてきた。当然しらを切る一択だ。


「さあな、俺も聞いたことない」


 イントロが流れ始める、これは俺たちが普段聞かないような今流行りの曲だ。そして、曲調的に美緒が普段作って歌っている曲調とはかなり離れている。


 美緒が歌い出してなにより驚いたのは彼女が歌の上手さを上手過ぎず下手過ぎない絶妙なラインに調整出来ることだった。それでも一般的な高校生より上手いのだが、香織も篠崎も「おお~」と声を上げるだけで正体がバレている様子はなかった。


「ご清聴ありがとうございました~」


「美緒ちゃん上手いんだけど! この後歌うのためらうくらいだよー」

 

 香織はパチパチと拍手しながらマイクを手に取る。いつの間にかちゃん付けで呼ぶ仲になっていた。相変わらず女子は距離を縮めるのが早い傾向にある。偏見だけど。


「本当にね、雪乃さん軽音部でボーカル出来るんじゃない?」


「いやいや篠崎くん私はそんな大勢の前で歌うなんてとても」


「そっかまあ、確かにうちのボーカル担当の部員も毎回緊張してるからなぁ……」


 篠崎は現役軽音部員でギターを担当していて腕前も中々のものである。それでもアコースティックギターなら美緒の方が上手いだろうけど。


 そのまま香織、篠崎、俺の順番でそれぞれ歌ってから最後に美緒がまた歌い、終了時刻の一時間まで残り二十分を切ったところで女子を部屋に残して俺と篠崎でドリンクを取りに外へ出た。


「歌ってる時の雪乃さん可愛かったな高野」


「そうだな」


 四人分のグラスにドリンクを注ぎながら短い会話を交わす。


「で、今日はデートだったのか?」


「聞かれると思った、別に行きたい場所があるっていうから付き合っただけ」


「それをデートと呼ぶんじゃないですか?高野さん」


 なぜか急にふざけた調子の敬語になる篠崎に俺は鋭い視線を送る。


「呼ばないですね篠崎さん」


「まあ、どっちでもいいけどさ二人が仲良くしてるとこ見るの好きなんだよねー」


 今度は表情も口調も真面目だった。篠崎はこちらを真っすぐ見て言うのでなんだか気恥ずかしさを覚える。


「そんなに見る機会もないだろうに」


「あはは、違いないね。もう少し素直になって見せてくれても良いんだぞ?」


「嫌だね、見たきゃお祈りでもしながら街を歩くんだな」


 ドリンクを注ぎ終えた俺と篠崎はグラスを両手に持って個室へと戻る。後ろで「恥ずかしがり屋だなーもう」と聞こえてきたけど俺は聞こえていないふりをした。


 部屋に戻ってからはもう一周それぞれ歌ってから終了時刻の一時間ぴったりにカラオケボックスを後にした。


「いや~突然だったけど楽しかったまた遊ぼうね美緒ちゃん」


「うん、また誘ってもらえたら行くね」


 手を振って俺たちはそれぞれの家の方向に向かって歩き出した。俺の隣にはなんだかほころんだ表情の美緒が歩いている。


「楽しかったか?」


「うん、凄く。こういう感覚初めてかも」


 美緒は人気者ではある。それは中学の頃からずっとそうだ。それにネット上には沢山のファンが居る。でもだからだろう、俺以外にあまり距離の近い友人というのが作れていなかった。


 そういう意味ではあの二人と友達になれたことは大きな意味があるのかもしれない。


「ねえ、今日夕飯一緒に食べても良い?」


「ん、構わないけど……そういえば食材切らしてたな」


「じゃあ、今から買いに行こう! 曲の方はもう浮かんできてるから今夜聞かせてあげる」


 上機嫌で弾むように先を歩く彼女に追いてかれないように俺も続いた──。

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