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隣に住む高嶺の花のクラスメイトは俺にだけ世話焼きな幼馴染のソングライター  作者: 月城曇


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4/6

二人で入る喫茶店と鉢合わせ

 一日の授業が終わり、俺は教室を出て美緒が待っているであろう校門へ向かう。今日は珍しく香織と篠崎は予定があるらしく遊びに誘われることはなかった。三人セットで遊ぶことはあってもあの二人だけで遊ぶことは滅多にない。まあ、なんにせよ好都合ではある。


「お待たせ」


「お、高野くん遊びに誘われたりしなかった?」


 美緒は既に校門の柱に背を預けて待っていた。スマホでなにかを確認している様子で、それでもこちらが声を掛けるとふっと微笑んでそんなことを聞いてくる。


「珍しく無かったな、美緒は?」


「誘われたけど、断っちゃった」


「大丈夫なのか? その、誘い断って俺と遊んでるとことか見られても」


「大丈夫だよー高野くんも私に負けず劣らずの有名人だしね不自然じゃないと思う!」


 負けず劣らずかどうかは議論の余地があるが、一応隣を歩いても不自然にならないように次席という立場になったわけだからもう少し自信を持っても良いのかもしれない。


「それじゃ行こうか、駅前からそこまで遠くないから」


「おう」


 駅近辺で女子が行きたがる場所と聞いて、スイパやらおしゃれな洋菓子カフェが浮かんできたのだが、どうかそういう場所ではありませんようにと俺は心の中で祈る。何度か通りすがったことがあるそれらの店は仮に女子と一緒でも厳しいところがある。


 

 駅に近づいてくにつれてすれ違う人の数は多くなっていく、何度か同じ高校の学生にもすれ違いそのたびに視線を感じていた。学内の一年生で有名な生徒が二人揃って歩いているというだけで結構注目されるようだ。


「明日の朝が怖いな」


 俺が頬をかきながらそう呟くと美緒はふふふっと笑う。


「そうかな、今更じゃない?」


 まあ、確かにそう言われればそうなのだが、俺と美緒の関係を知る人からしたら付き合っているんじゃないかなんて噂が立ちそうである。


「これから沢山出かける機会あるだろうし慣れようよ、ね?」


 美緒はそう言って俺の方に少しだけ身体をくっつける


「なるべく気にしないようにする……だからとりあえず屋外でくっつくのはなしで」


 一瞬跳ねた心臓の鼓動を落ち着かせるように深呼吸して言うと美緒は「大げさだなぁ」と微笑んでいた。


「でも屋内なら、良いんだ?」


「……任せる。時と場合によるけど」


 へへ公認だーと笑みを深めて、こりもせずまた身体をくっつけようとするので俺はそれを手で止めた。そのやりとりを何度か繰り返したせいで余計に街に歩いている柏木生の視線を集めることになった。



「おおー渋い」


 渋い、というのが適切なのかは分からない。でも駅前から少し歩いた場所にある路地裏にひっそりと建っているアンティークなカフェを見て第一にそんな印象を受けた。そして行き先がスイパでも洋菓子カフェでもなかったことに心底安堵していた。


「私、こういう知る人ぞ知るカフェみたいなの好きなんだよね入ろ」


 お客さんはどうやら俺たちだけみたいだ。中は街の常連さんが通ってそうな落ち着いた喫茶店のような感じでカウンターで本を読んでいる三十代くらいのマスターはこちらを一瞥すると「どうぞお好きな席に」と言って立ち上がった。


 俺たちは窓際の席に向かい合って座り、おしぼりを持ってきたマスターに美緒が注文していた。


「ここのチョコレートケーキがずっと食べたかったの」


 言いながらおもむろに制服のポケットからイヤホンがささったスマホを取り出して片方を差し出してくる。


「はい、ここならいいでしょ」


「……さては狙ってたな?」


「だって帰ったらしばらく作業しなきゃいけないし一緒に聞けるタイミングって今しかないもの」


 そう言われると突き返すわけにもいかなくなる。別に嫌なわけじゃないただ気恥ずかしいだけだ。俺は差し出されたイヤホンを受け取り片耳につける。


 聞こえてきたのは俺の好きなバンドの新曲だった。天気と憂鬱な感情をからめた繊細な歌詞とサウンドが特徴だ。


 俺も美緒も聞き入っていた。雨は降っていないけどまるで店の外から絶えず雨音が聞こえてきているようなそんな錯覚を覚える。


 一曲三分半はこの状態になった俺たちには短すぎて結局その後も関連楽曲を聴いて過ごした。


「は、結局沢山聞いちゃったね」


「永遠に聞いてられるな」


「えー最初はあんなにしぶってたくせに」


 返す言葉もないので、俺は既にテーブルに置かれているコーヒーを一口飲む。中々苦味が強い。


「わあ、ケーキ美味しい~そこら辺の専門店のケーキより好きかも」


 つられて俺もケーキを口に運ぶ。ビターな大人の甘味と一緒にとろけるようなくちどけがして、なるほどこれは美味い。コーヒーとの相性も抜群だ。



「ていうか、もう十八時過ぎだよそろそろ帰らないとだね」


 もうそんなに経ったのかと時計を見ると確かに十八時二十分くらいになっていて、慌てて荷物と財布を持ってお会計に向かった。


 路地裏を出ると茜色だった空はすっかり暗くなり、夜の訪れを感じさせた。街の明かりがまぶしい時刻だ。


「おやおやお二人さんデート中かな?」


「高野くんやっぱり隅に置けない」


 横から聞き覚えのある声がして俺と美緒はそちらを向く。


「香織に徹じゃないか……」


 可能性としては考えてはいたけどまさか本当に鉢合わせるとは……。

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