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隣に住む高嶺の花のクラスメイトは俺にだけ世話焼きな幼馴染のソングライター  作者: 月城曇


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3/7

初めての手作り弁当

  俺は基本的に昔から勉強自体は嫌いではないのだが、それでも全教科の中で得意不得意はある。具体的に挙げれば国語、社会、体育。まあ、最後は単純に運動自体が嫌いなだけだ。


 午前中は一時限の国語から始まり社会、体育と続く苦手教科のフルコースだった。それだけに体育館から教室に戻り、お昼休みのチャイムが鳴った時は思わずダラーンと机に突っ伏してしまいそうになった。


「流石の高野もこの午前のスケジュールはこたえたんじゃないか? 学食でエネルギー補給しようぜ今日は限定メニューあるらしいし」


 いつものように篠崎が学食に誘ってくる。普段の俺なら限定メニューを逃すこともないし、篠崎や後々やってくる男子生徒と昼食を共にするのを断ることはない。ただ、今日は断る必要があった。限定メニューが魅力的なことは間違いないのだが、俺にはクラスの男子が束になって欲しがるであろう代物を持っているからだ。


「悪い、今日は昼食持参しててなそれにちょっと一人で食べたい気分なんだよ」


「へえ、高野が持参ねぇ……」


 篠崎の物珍しいものでも見るかのような視線が痛くて俺はつい視線を逸らす。


「ま、そういう時もあるか、なんか悩みがあったら遠慮なく相談しろよ!」


 ポンポンと徹は俺の肩を軽く叩いて他の男子生徒と共に教室を出て行った。よくよく考えたらいつもそんなことしないのに急に一人で食べたい気分とか、変な誤解されていないと良いけど。されていたら後が面倒くさそうだ。


 俺は持つものを持って昼食を食べるのに適した屋外の場所へ向かった。


 柏木学園には青空の下でご飯を食べたり、生徒同士が交流出来る広場のようなものが敷地内に複数存在する。俺はお昼の時間、特に人が少ない広場のベンチに座って満を持して朝、メッセージの書かれた紙と一緒に置いてあった弁当箱を膝にのせる。


 メッセージの内容は『残したら泣く!!』だった。そんなメッセージを書くくらい残してしまう可能性のあるお弁当なのか……とドキドキしながら開けてみると、なんてことはない。見た目は普通に玉子焼きやウィンナー、小さなナポリタンに日の丸ご飯。


(味も普通に美味い、なんていうか昔母親が作ってくれたお弁当の味がする)


 ──しかし、お弁当はまあ良いとしてさっきからジリジリと視線のようなものを感じる。出所はもう分かっていた。ベンチの後ろ大きな木の方を向くと案の定、美緒がこちらの様子をうかがうようにひょいっと顔だけ出している。


 視線が──合う。


「なにしてるんだ」


「その、盗み見るつもりじゃなかったんだけど、どうしても反応が気になって……」


 視線を泳がせながらおずおずと出てきた美緒の手にはお弁当が握られていた。


(なんだ一緒に食べたかったんじゃないか)


 俺は彼女を手招きして隣に座ってもらう。確かに今まで学校で一緒に昼食を食べる機会はなかったけど、だからといって俺なんかに今更遠慮することもないだろうに。


「美味しかったよお弁当」


「ほ、本当? 迷惑じゃなかった? 今日学食の限定メニューの日みたいだったし」


「これで学食の方が良かったなんて言う男子はいないと思うぞ、多分」


「良かった……」


 美緒はホッと安堵したようなため息を吐いて胸を撫でおろした。さて、もう一言二言添えるべきだろうな。


「その、なんかおかずはオーソドックスなんだけどそれが安心感というかお手製弁当って感じがして良かった。いつも作ってくれる食事は割と凝ってるけど、こういうのもいいな」


 まずい、つらつらと感想述べてみたけど語彙力が終わってる。言い終わった後しばらく隣を見れなかった。しかしトントンと肩を叩かれて隣を見ると美緒は色白の頬をほんのり赤に染めて言った。


「作って良かった嬉しい……!」


 にししっと満面の笑みをこぼす美緒に思わずドキッとしてしまう、昼の穏やかな陽光に照らされて余計輝いて見える。


「そ、そうか不安が消えたなら良かった……また作ってもらえると嬉しい」


 その後は他愛のない話をして過ごした。最近良い曲を見つけたという話になった時、美緒はイヤホン共有して今すぐ聴こうと頑なにすすめてきたが、一方の俺は頑なに拒否した。人気はないとはいえ、誰が見ているか分からないからだ。


「むぅ、じゃあ学校終わりに私の行きたいところに付き合ってくれるなら引き下がるー」


「はいはい、楽曲提供の締め切りが近いんだよな」


「ど、どうしてそれを」


「納期が近づくとパソコンの前に戻りたくなくなるのは全クリエイター共通だ。帰宅したら嫌でも作業しなきゃいけないもんな」


「うぅ……逃げた後はちゃんと戻るもん、ダメ?」


 まあ、正直俺も帰ってすぐ勉強やら開発を進めるのは少し面倒くさいと思っていた。それに行きたいところというのがどこなのか気になるし。


「いいよ、迷惑かけないようにちゃんと間に合わせるんだぞ」


「やっぱり高野くん優しいー灰原さんとは大違い」


 灰原さんとは美緒のマネージャーであり、確かに厳しいところはあるが仕事としてやる以上は妥当な厳しさだと思う。


 そうして、一通り話し終える頃には昼休み終了のチャイムが鳴った。

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