第一章 第8話 『 運命に抗え 2 』
息も絶え絶えになりながらも、学校へと辿り着く。
やはり、誰かいる。
何かがぶつかる音が、校庭に響いている。
「校庭か」
あかねは校庭へと足を進める。
――あかね、一ついいかい。
『 』が口を開く。
――運命に抗う力は、祈れば祈るほど強くなる。
絶対に挫けないで。
「……ありがとう、それだけで元気が出るよ」
『 』にそう告げ、再び走り出す。
校庭では、展望台で見た黒い何かと、一人の少女が交戦していた。
「何なのよコイツ!急に湧いて出てきてッ!」
少女が剣を振るい、黒い何かを斬りつける。
切口が燃えていた。
――あれはレーヴァテインだね。
「レーヴァテイン……って北欧神話の?」
レーヴァテイン――神話に出てくる神器であり、ラグナロクにおいてスルトが使っていた炎の剣と言われている。
そんな幻想上の剣がなぜ現実に……
――あれも運命に抗う力だね。
『 』が言う。
――君にも備わっているんだ。ああいう力がね。
なるほど。運命に抗う力=神話上の武器ってことね。
なら、私の武器はミストルテインとかそんなんかな。
「ヤドリギの枝」でもいいな。
――じゃあここで答え合わせをするかい?
「……そうするか」
私は『 』から説明を受ける。
まず目を閉じる。
そして、想像する。
運命に抗うということを。
運命に打ち勝つということを。
そうすれば、君に抗う武器が手渡されるよ、と。
――少しでも意識が途切れると駄目だからね。
ちゃんと集中してね。
言われなくともわかってます。
私は静かに目を閉じる。
そして。
今まで抗ってきた運命を。
そして今この運命を覆す奇跡を。
私は想像した。
――――――――――
――カチッ
古いラジオのスイッチが入る音がした。
あのラジオだらけの部屋だ。
ラジオの塔の頂点。
そこで私を眺める少女がいた。
『何しに来た、裏切り者』
「裏切ったのはあなたでしょ?
てか、私もなんでここに居るのかわかんないんだけど」
本当にわからない。
もしかしてここに抗うための武器があるのか?
『もうお前の顔なんか見たくないんだ。消えてくれ■■■』
やはり特定の言葉にノイズが入る。
「ねえ、最後に言った言葉。なんて言ってるの?」
『あ?■■■だ。お前の名前だろ?なんでわかんないんだ』
私の名前……私の名前は――
『おい、■■■。誰かがお呼びだぜ?』
「え、あぁ、うん」
名前に気を取られて聞いてなかった。
――あかね、聞こえてるなら返事をしてくれ。
あかねッ!
『 』が叫んでいる。
『さっさと行ったらどうだ、■■■。
そして二度とここには来るな』
少女はラジオにコードを繋ぎながら、言葉を吐き捨てる。
「そうだね、もう二度とここには来ないことを願うよ」
そう言って私は、目を閉じる。
再び目を開けたとき、私の手には一本の剣が握られていた。
一見何の変哲もない剣に見える。
……何の変哲もない剣って何だろう。
いかん、感覚がマヒしてる。
「……よし、行こう」
剣を握りしめ、校庭の中へと再び足を進める。
まだこちらには気づかれていない。
黒い何かまであと数百メートル。
あと数十メートル。
そして
「大将、討ち取ったぁぁぁぁ!!」
背後から剣を振りかざす。
剣は黄金に輝きだし、黒い何かを縦半分に断裂させる。
黒い何かは粒子となって消えていった。
それと同時に街中に広がっていた黒い腕も消えていく。
「これが、運命に抗う……か」
その気持ちは、清々しかった。
まるで心が晴れやかになる、あのラジオを聴いているときのように。
「ぁあれ……?」
力が抜け、その場に倒れ込む。
眩暈がする。
吐き気も酷い。
――ガス欠だ。少し休むといいよ。
徐々に瞼が重たくなる。
意識も
徐々に
薄れて――
プツンッと切れてしまった。




