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リライト・ガール  作者: 司城まか
第二章 『 巡るめく星々 』

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第二章 第13話 『 毒にも薬にもならない 』

 ――カチッ


 ラジオのスイッチが入った音がした。


 モノクロだった世界が、徐々に色付いていく。


「ひさし――くもないか。ま、おかえりってところだな」


 ラジオの山から下りてくる一人の少女。

 名前は未だにわからない。

 

「■■■は、本っ当に死ぬのが好きだな」


「別に好きで死んでるわけじゃないもん」


 壊れたラジオの上を歩きながら、少女は私に話しかける。


 ここは私と彼女の世界。

 彼女は電脳空間とか言ってたけど、生身の人間が入ってこられるものなのか?

 それに、何故ラジオなんだ。

 もっとこう……パソコンとか、ケータイとかあるじゃん。


「で、今回なんで死んだかわかるか?」


 少女は床のラジオを一つ手に取る。

 ラジオの山の奥から伸びるコードが、だらん、とぶら下がっていた。


「わからない」


 少女が「うんうん」と頷く。


「正直でいいね。

 答えは『毒』だ」


「毒?」


「そう、毒。今回は遅効性のものだろうね」


「……いつから仕掛けられてたの?」


「さぁ?出会った時からじゃない?」


 出会ったとき……もうあの時から毒は撒かれていたんだ。

 でもどうやって?

 彼女は一歩も動いてない。

 私たちが攻撃してもその場で避けるか、腕が守って――


「もしかして……!」


「正解は導き出せたかな、■■■」


「多分だけど、あってると思う」


 確信はない。

 でも、試す価値はある。


「じゃ、答え合わせと行こうか」


 少女は手に持っていたラジオのコードを勢いよく引き抜く。


 色のついた世界が再びモノクロとなり、そして――


 ブツンッと切れる。


――――――――――


「……んっ」


 目が覚める。

 

 身体を起こすと、既に紫苑が朝食の支度をしていた。

 

「あ、おはようあかねちゃん。もう少しでご飯できるから」


 鼻歌を歌いながら、手を動かす。


 オリオンの姿は――あった。

 ベッドの上で豪快ないびきを立てながら眠っている。


「そいつのいびきのせいで全然眠れなかったよぉ。

 ほんと最悪」


 「アハハ」と軽く笑いながら、オリオンを起こす。


「オリオン、もうすぐ朝食できるから起きて」


「……んぅ、おぉ、あかね嬢か。

 天使が起こしてくれたん思ったぜ」


「チッ」


「紫苑さん、ステイステイ。

 その手に持ってる包丁を置こう」


 怒る紫苑をなだめながら、朝食の準備をする。


――――――――――


「おい、何で俺の分はねぇんだ?」


「最強なんでしょ?朝ごはんくらい自分で作ったら?

 はい、あかねちゃん。あーん」


「なんであかね嬢にはそんなに優しい癖に、俺には厳しいんだよ」


「あんたが嫌いだからよ」


 ストレートに言う紫苑。

 これには最強のオリオンさんも何も言えない。

 ま、嫌われるのは慣れてるだろうな。史実が史実だし。


 さて、そろそろアンタレスが来る時間だ。

 奴の攻撃手段はあの黒い腕と謎の毒だ。


 黒い腕は斬ってもまた生えてくる。

 そしてアンタレスを守り続ける。

 馬鹿正直に腕を斬り続けていると、今度は毒でやられておしまいだ。


 そしてその毒について。

 恐らくこの毒は、腕に触れた瞬間発生するものだ。


 アンタレスは一歩も動いていない。

 だから毒を撒くことは不可能。

 じゃあどうやって撒くか。

 決まっている。

 何かに付着させるんだ。

 そうすれば、自らが動かなくても毒を撒ける。


 じゃあどう対処すればいいか。


 1.息を止める

 否、止めたところでどうもできない。

 皮膚から吸収されてそのままお釈迦になるだけだ。


 2.腕を斬らない

 それこそアンタレスに攻撃が当たらない。

 討伐もできなくなる。


 3.隙を見つけてアンタレスを攻撃

 出来たらやってる。

 出来ないからこう考えてるんじゃないか。

 

 考えがまとまらない。

 正解が見つからない。

 どうするか。

 どうしようか。


 そう考えているうちに。


「こーんな朝早くから、元気ですねぇ~」


 保健室の入口。

 スコーピオンテールの少女が、赤い目を爛と輝かせていた。


「テメェ!」


 オリオンが弓を構える。

 矢が白銀に変わる。


「その身体、返してもらうぜ」


 白銀の矢が、重い音を立てて放たれる。

 と同時に。


「そんなの効かないよー」

 

 空間が裂け、無数の黒い腕が矢を止める。


「そんなもの、こじ開けてやらぁ!!」


 腕に向かって突進していくオリオン。


「ダメッ!その腕には――」


「もう、遅いよ」


 黒い腕が広がると、一瞬にしてオリオンを包み込む。


「あーあ、残念だなぁ。こんな形で終わっちゃうの」


「――!!」


 腕の中でオリオンが藻掻く音だけが聞こえる。


「ていうかー、君よく気づいたね」


 アンタレスがあかねを指差してそう言った。


「普通の人間はわからないのにー。

 あ、普通の人間じゃないか」


 ニヤニヤと笑うアンタレス。

 その顔が妙に気持ち悪い。


 そんな会話をしているうちに。

 腕の中で藻掻いていたオリオンの音が聞こえなくなっていることに気がつく。


「あーあ、動かなくなっちゃった」


 腕が消えると、中からピクリとも動かないオリオンが現れる。


「最強も、これには勝てないんだねぇ」


「なんなのよ……」


 紫苑の声が震えている。


「何なのよ、その体たらくはッ!!

 あなた最強なんでしょ!?だったらそんな攻撃で死んでないで、立ち上がりなさいよ!」


 しかしオリオンからの反応はない。


「うるさいなぁ……いきなり叫ばないでよ」


「ぐッ……!」


「紫苑っ!」


 アンタレスのが喋ると同時に、紫苑が真上に吹き飛ばされる。

 一瞬の出来事だったが、黒い腕ではなかった。

 

 わからない。

 コイツについての情報が少なすぎる。

 

「あとは君だけだ」


 じりじりと詰め寄ってくるアンタレス。

 無数の黒い腕に謎の攻撃。


 正直今の私に勝ち目なんか無い。

 もう無理だ。

 降参しよう。


「……つまらないね、君」


 アンタレスの表情が険しくなる。


「あぁつまらない。

 なんだその顔は。表情は。感情は」


「もっと足掻けよ。もっと叫べよ。もっと私を奮い立たせろよ!」


「諦めてんじゃねぇよ。ここからだろ?

 こいつらを見捨てるのかよ」


「……」


「はぁ、つまらない」


 そう言ってアンタレスは黒い腕を振り上げる。


「君、死んだ方がいいよ」

 

 その瞬間。


 湿った破砕音が保健室に響き渡った。

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