第二章 第11話 『 ひとりぼっちの殺し屋 3 』
===============================================
「クソがッ!なんで当たらねぇんだ!」
何発撃っても避けられる矢。
まるで意志を持って避けているみたいだった。
「ねぇ、私それ嫌いって言ってるじゃん。君、モテないでしょ」
「残念だが、嫁がいるんだ」
「嫁さんも物好きだねぇ……おっとっと」
アンタレス?は、オリオンを煽りながら矢を避けていく。
オリオンも負けじと矢を放つ。
しかしなぜ死んだはずのアンタレスが生き返ったんだ?
確実に心臓は射止めたはずだ。
そして、脈が無いのも確認した。
なのに、今目の前にいる。
死んだふりをしていた?
瞬間的に脈を止めたとでもいうのか?
いや、心臓が逆位置にあったのかもしれない。
だが、それでも致命傷のはずだ。
なのに、あんなにピンピンしている。
おまけに口調も少し違う。
アイツは一体、誰なんだ?
「もー、ずっとその攻撃ばっかじゃん!やめてよね!」
ぐちぐち言いながら矢を避けるアンタレスと思われる少女。
あれだけ弓矢に反応するんだ。恐らくあいつの弱点なんだろう。
いや、どんな人間にも弱点になりえるんだが。
特に弓矢が弱点なんだ。
なら、こっちにも分がある。
矢を五本取り出すと、目にも止まらぬ速さで矢を放つ。
それはもう、人間業ではない。
まるで神の領域にでも達しているようだった。
「はっやーい!で・も・当たらないよー!」
五本の矢すべてを見切る少女。
やはりコイツ、人間ではない。
普通の人間であればあれを避けきれない。
元最強であるアンタレスさえも避けきれなかったのだ。
「オメェ、人間じゃねぇだろ」
「君も大概だけどねー」
肯定はされなかったが、否定もされなかった。
なら、こいつは非人間で間違いないだろう。
「むむっ!あれは……リブラ!」
少女の目線の先に、背丈の高い男が立っていた。
黒いスーツを身に纏い、手には天秤をぶら下げている。
「おーい、リブラ――ぐえッ!」
リブラと呼ばれる男は、いつの間にか少女の目の前に現れ、腹に一発拳を打ち込んだ。
「身体を手に入れたら戻ってこいと言っただろ。これは約束を破った罰だ」
「だからってお腹殴らなくてもいいじゃん!」
腹をさすりながら、男に噛みつく少女。
一体俺は、何を見させられてるんだ。
「帰るぞ。『あの人』が目覚めたらしい」
「んぇー、今いいところなのにぃ」
男が手を縦に振ると、空間に裂け目ができる。
その裂け目を広げ――
「コイツを取り戻したいなら、着いてくるんだな。
それが嫌なら帰ってもいいぞ、最強」
男は少女を肩に担ぎながら、俺に笑みを浮かべた。
その笑みは、嘲笑だ。
俺を嘲笑っている笑みだった。
着いてこい――か。
こいつらが何なのかはわかんねぇ。
でも。
人の死体で勝手に暴れまわるのは許せねぇ。
しかも、アンタレス。
アイツの身体を使うのがもっと許せねぇ。
「いいぜっ、その挑発乗ってやるよ!後で後悔しても知らねぇからな!」
「ふっ……お前も面白い男に目をつけられたな、『アンタレス』」
そう言って男たちは裂け目の中へと消えていった。
待ってろよ。
俺が必ずお前の身体を取り戻してやる。
そんでちゃんとした墓を建ててやるんだ。
俺は閉じかけの裂け目を無理やりこじ開け、奴らの背中を追いかけていった。
===============================================




