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リライト・ガール  作者: 司城まか
第二章 『 巡るめく星々 』

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第二章 第5話 『 アケボシの正体 』

 カチッ――


 ザ……ザーーーーーー。


 耳障りなノイズが響く。


 次に感じたのは、硬い床の感触だった。


「……」

 

 ゆっくりと目を開く。


 見慣れた天井。

 見慣れた床一面のラジオ。

 赤黒いコードが繋がれている。

 そして


『もう、死んだのか?』


 山積みになったラジオの頂に座る白髪の少女。

 少女は山の上から私を見下ろしていた。


「もう死んだって、これは予測できないよ」


『隙を与えた■■■が悪い』


「くぅ……」


 全くその通り過ぎて、言葉が出ない。


 あの時、振り向かなければ殺されなかったかもしれない。

 もし、アケボシに攻撃を仕掛けていれば何か変わっていたかもしれない。


『ま、次に期待だな。頑張って運命に抗ってみろ』


「なっ!他人事のように……」


 実際他人事である。

 アイツには関係ない。そもそもアイツの名前すら私は知らない。

 アイツは何なんだ。

 正直言うと、若干私に似ている感じがする。

 信じたくないが。


『それと』


 少女がラジオに繋がっているコードに手をかける。


『アケボシにはまだ、何かあるっぽいぜ』


 少女がにやっとする。


『例えば、星座とかな』


 そう言って、コードを引き抜いた。


――――――――――


「ぬふふふ、あかねちゃーん。お着換えの時間ですよー」


 目を覚ますと、目の前に全裸の変態がいた。

 毎回この状況になるのはどうにかしてほしい。


「あっ……えーと、エヘッ♡」


 本当にどうにかしてほしい。


 とにかく今日は紫苑もつれて、アケボシと対峙する。

 それともう一つ。


『例えば、星座とかな』


 アイツの言っていたこの言葉。

 どういう意味なんだ?


 他にも何かあるって、アケボシに数回しか会ってないから

 何があるかもあまりわかっていない。


 しいて言えば、攻撃が通らない。

 移動速度が速い。

 裂け目を発生させ、黒い腕を操れる。


 の三つだけだ。


 そもそも攻撃の通らない相手をどう倒せばいいんだ。

 それに星座と何の関係が……


「あかねちゃん!今日の夜は満天の星空が見えるんだって!」


 紫苑がスマホの画面を見せてくる。


 『本日は雲一つないで最高の一日!

  夜は満天の星空を見ることができます!

  明け方には明けの星(金星)とさそり座が見えるかも!!』


「だって!絶対に見ようね!」


 これから襲われるかもしれないってのに、暢気な子――


「待って。これ、いつ投稿された記事?」


「えっと……昨日の夜だね。投稿者は――書いてないや」


「いや、投稿時間だけでいいよ、ありがとう」


 分かった。


 全部分かった。


 何であいつが『例えば、星座とかな』と言ったのか。


 なんで攻撃が通らなかったのか。


 そして、アケボシの正体が何なのか。


「でも、これを確証づけるものがない……」


「一人で何ブツブツ言ってるの?」


 紫苑が最後のサンドイッチを手に持ちながら、顔を覗いてくる。


「いや、何でもないよ。それより後で被害状況だけ見に行きたいから

 街に出る準備だけしておいて」


「ラジャッ!」


 サンドイッチを咥え、敬礼をする紫苑。


 もしこれが違えば、また初めからやり直しだ。


 ……信じるしかない。

 運命に、抗うんだ。


――――――――――


 真南に昇る太陽が、アスファルトをじりじりと照りつける。


 遠くの方にゆらゆらと陽炎が立っているのが見える。


「あ”つ”い”ぃ”~」


 汗だくの紫苑は、手で顔を仰ぐようにパタパタと動かす。

 が、その動作で余計汗が噴き出る。


「影が……影が無いぃ~」


 建物が崩壊しているのもあり、影となるものがほとんどない。

 唯一生き残っていた学校も、影となる部分が少ない。


「ほら……水あげるから」


 ペットボトルに入った水を紫苑に渡す。


 雲一つない快晴。

 こんなに今日を呪った日は無い。


 紫苑は受け取ったペットボトルのキャップを外すと、勢いよく水を飲み始めた。


「……ぷはぁっ!生き返るぅ~」


「一気に飲みすぎると、余計喉乾くよ」


「だって、すっごい喉乾いてたんだもん」


 そう言って、水を半分以上飲んでしまう。

 こいつ、あとのこと何も考えてないな。


 そうこうしているうちに、件の公園に着いた。


 ここであの裂け目が出現する。

 そしてあの曲がり角。

 あそこに、アケボシが私達を見ているはずだ。


――あかね、勝算はあるのか?


 『 』が心配そうに聞いてくる。


 大丈夫。違ったらまたやり直すだけだから。


――……


「あかねちゃーん、ここには人いないと思うよぉ」


 その発言と同時に


 裂け目が発生する。


「来たっ!」


 剣を取り出し、裂け目に向けて剣を構える。


 光の粒子が集束し、一つの刃となる。


「これでどうだぁぁぁぁぁぁ!!」


 裂け目めがけて斬りかかる。


 私の算段はこうだ。


1.アケボシの正体は、明けの星と関係のあるさそり座・アンタレス。

  アンタレスには様々な名前が付けられているがその中の一つに「コル・スコルピィ」というものがある。

  これは「サソリの心臓」という意味だ。


2.1が本当なら、攻撃が通らないというのにも辻褄が合う。

  攻撃が通らない=実体がない。だから、本体(心臓)は別の場所にいる。


3.じゃあどこに隠れているのか。答えは簡単。

  私達人間が入ることのできない場所。つまり――


  ”裂け目の中”ってことだ。


 だから、裂け目ごとぶった切る。


 もしコレが違うのなら、次回、また考えなければならない。

 

 だが、もうこれに賭けるしかない。 


「ブッ千切れぇぇぇぇ!!」


 光の刃が、裂け目を一刀両断する。


 瞬間、裂け目の中から奇声が聞こえた。


 成功だ。


「こ”の”や”ろ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”!!フ”チ”コ”ロ”シ”テ”や”る”っ”!!!」


 アケボシ――アンタレスは、縦半分に斬られた身体を再生しながら


 裂け目を広げ、這い出てくる。


「キサマは……キ”サ”マ”た”け”は”ユ”ル”サ”な”い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”!!」


 響く奇声。


 割れるアスファルト。


 裂ける空間。


 これからが


 本当の抗いとなるのだ。

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