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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第四章 帝国激震編
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第一話 突撃はつらいよ③

 検問所を抜け、

 丘陵へ向かう一本道から外れた時点で、

 シドは足を止めた。


「……このまま行くのは、まずいな」


 丘陵の麓には、帝国軍の陣が見えている。

 旗。陣幕。兵の動き。どれもが“整いすぎて”いた。


「兵はいる。でも、俺たちの居場所は無い」


「つまり?」と寅二郎。


「今の俺たちは――どこの部隊にも属さない。

 通せば不自然、通さなければ拘束対象だ」


 リラも頷いた。

「研究員証が使えるのは“検問”まで。

 前線じゃ、逆に怪しまれる」


 前方から、伝令が駆け抜けていく。

 別の丘では、魔法の光が一瞬だけ空を染めた。


「戦が動く直前だ」

 シドは低く言った。

「動く前に、隙間に入る」


「隙間?」

「補給線。医療幕営。退避用の仮設陣地……

 要するに戦場の“端”だ。

 魔弾銃部隊がいるなら、必ずそこに出入りがある」


 寅二郎は、無意識に左脇の重みを確かめていた。


「つまり――潜むってことか」


「そうだ。今は主役じゃない」

「おい」

「“今は”だ」


 三人は進路を変え、丘陵の陰へと身を滑り込ませた。

 砲撃の衝撃が地面を震わせ、土煙が遠くで上がる。


 戦場は、確実に呼吸を始めていた。


(動け。だが、出るな)

(見るな。だが、聞け)


 シドの判断は冷静だった。


 しかし同時に――


 三人は理解していた。

 この“待ち”が、長くは続かないことを――

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