第一話 突撃はつらいよ②
翌朝、打ち合わせを済ませ検問所へと向かった。わざわざ戦場へ赴く者は少ないのだろう、検問待ちの列は数組だった。それでも先頭にいた商人風の男が別の場所へと連行された。
リラは思わず身体を固くした。
しかし大丈夫、と寅二郎が呟き、
シドも半歩寄り添っていた。
「次」
いよいよリラたちの番が来た。
リラが引きつった笑顔で、恐る恐る、証を手渡す。
検問所の兵士が文面を読んでいる。
その“間”が長く感じられ、息をのむ。
兵士は三人を見回すと、リラに尋ねた。
「名は?」
「トングです」
「後ろの二人は?」
「護衛に雇った冒険者さんです」
リラが振り返ると、
二人が腕を組みふんぞり返っていた。
「ふん」
「ふふん!」
やたらと鼻息の荒い寅二郎とシド。
別の兵士を呼び、何やら話し込む様子にリラの頬から汗が滴る。さらに別の兵士もこちらへ来るのが見え、リラの心臓が早鐘を打つ。
その時、
ドオン!
遠くで爆発音が轟いた。
「ちぃ。行っていいぞ」
と、証を返され三人の通行許可が出た。
門を抜けしばらく歩くと、
緊張が解けたのかリラが笑い出す。
「何よ、あの恰好。ふんぞり返ってバカみたい」
「何だよ、効果覿面だっただろ?」三人で笑い合った。
しかし、戦場はゆっくりと動き出していた。
爆音轟く戦場では、
レオン大将軍率いる帝国軍が、“魔王軍殲滅作戦”に向けコルダ丘陵の麓に陣を張っていた。
「この時期に魔弾銃部隊を投入せよ、だと!
やつらは研究員だぞ。帝国の“民”だ!
皇帝陛下は何を考えておられるのか」
レオンはいつになく声を荒げていた。
「今の発言は聞かなかったことにいたします。大将軍」
副長が直立不動の姿勢で言った。
「構わん。現場の指揮官は俺だ。
その程度の罪など後でいくらでも受けよう」
(しかも魔弾銃は最終段階、
つまり完成はしていないということ。解せぬ)
「部隊の責任者を呼べ。魔弾銃の詳細を確認したい」
20人から成る魔弾銃部隊、
その部隊長として呼ばれたのは学者然とした若者だった。
「魔弾銃の性能は?射程は、威力は、どれほどか」
「射程も威力も、従来の魔法を超えます。予定では、ですが」
(……予定とはな。目を見ればそれなりの覚悟を感じるが、しかし)
「お前たちは“切り札”だ。
私からの指示があるまで発砲を許可しない。出来るな?」
レオンはやはり彼らを“使う”ことをためらった。
後方支援の形で置くことにした。
(時折、放たれる極大魔法。大物の気配もある。
俺がやるしかない、か――)
レオンは丘陵の頂を見据え、拳を握りしめるのだった。




