表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第三章 ガルディア帝国編
94/128

第八話 侵入はつらいよ③

 マゼルに食らった酸の治療に、

 寅二郎は座って、リラの魔法による手当を受けていた。


 へたり込んでいたトングが、

 ようやく立ちあがり寅二郎たちへ言った。


「ありがとうございます。

 やはり主任は魔族だったのですね」


「ああ、そうだな。

 しかし、不穏なことを言っていたな。

『魔弾銃は完成しないよう。細工がしてある』と」


「はい、確かに魔弾銃には闇属性魔法の呪いが仕組まれていたのですが…私たちは“出力の微調整に必要”と教えられ触らせてもらえない部分が」


 はっと顔を上げトングが言った。


「皆さん、ついてきてください。もしかしたら…」


 走り出す勢いのトングに、

 寅二郎たちは慌てて後をついていった。


 連れてこられたのは別の部屋、

 主任の部屋だというトングが金庫の前で言った。


「この中に魔弾銃が残っているかもしれません。

 厳重な封印がしてあって中を見たことは無いですが、今までの魔弾銃のプロトタイプと言えるものがどこかにあるはず…」


「それがここってことか」


「しかし、厳重な封印魔法がしてあるな。

 しかも闇属性由来だ」

 シドが金庫に浮かぶ封印術式の光を見て言った。


「それなら私、出来るかもしれない」

 リラが前へ出ると、すっと目を閉じ詠唱に入った。


「慈愛と救済を司る女神よ

 歪められた因果を正す清浄なる法の力よ

 この身に刻まれた呪いを解き、

 闇の干渉をすべて退けよ

――《カースキャンセル》」


すると、金庫の前で漂っていた術式の光が消え失せ、


 カチリと音が鳴った。


 トングが金庫を開くと、中には箱が二つあった。


「あった!これです」


 トングが箱を一つ取り蓋を開けると、

 中から魔弾銃が出てきた。


 リボルバータイプの様にボディが太い筒状になっており、重厚な黒鉄のそこかしこには術式が刻印してあるのが分かる。金庫と同じ封印がしてあるのが見え、リラが解呪した。


 その光景を見ながら、

 深く考え込んでいたトングが言った。


「皆さん、コルダ丘陵へ行くのですよね」


「ああ、ベルゼと決着をつけてやる」


「なら、その銃を持って行って下さい」


「いいのか?」


「やはり、魔弾銃は“禁忌”であるべきです。

 そう確信しました。

 その銃もまだ安全であるかも分からず、

 お渡しするのは心苦しいのですが」


「ああ、いざという時まで使わないさ」

 寅二郎が胸を叩き、


「そうだな。一段落ついたら破壊しよう」

 シドが言った。


「それより、箱はもう一つあるけど?」


 リラが金庫を覗き込む。


「何だろうな、開けてみるか」


 と寅二郎が箱を手に取り、机の上に置いた。


「おい!これ」


 寅二郎が蓋を開けてみると、中には拳銃“ニューナンブ”が入っていた。ご丁寧に、ホルスターと並べて置いてあり、油の匂いが、昨日磨いたかのように残っている。


「これ、触っていいか?」


 返事を待たずに寅二郎は手に取っていた。


反射的に、銃口を床へ向けた。

考えるより先に、右手の親指が側面のラッチにかかる。


かちり、と小さな音。

シリンダーが左へ滑り出た。


覗き込む。

六つの穴のうち、五つは空。

一つだけ、鈍い鉛色が残っている。


「……一発か」寅二郎が呟く。


指先で確かめるように、シリンダーを元に戻した。

金属が噛み合う感触が、妙に懐かしい。


「……体が覚えてる。すげぇなじむな」


 寅二郎の流れるような所作に、

 皆見とれていたが、トングが言った。


「たぶん、

 昔の召喚者が残したものを、

 見本として確保していたものかと。

 それも是非お持ちになってください」


「ありがとう。もらっていく」


寅二郎はそう言うと、ホルスターを手に取る。


革紐の長さを測る。

そのまま頭から通し、ホルスターを左脇へ滑らせた。


肋骨に沿う位置。

心臓の少し下。


腕を下ろすと、どこにあるかが分かる。


「……ここだな」


左脇に銃


右手で引き抜く


動作確認を終えた寅二郎の背中に、シドが声をかける。


「行くか」

「ああ、行こう。決着を付けに」


――行先は激しさを増す戦場。

しかし一段頼もしさが増した寅二郎と共に、

一行は外へと歩き出す。


「な?俺が主人公だろ」

「まだ言っていたのか」


そう返しながらも、

シドは顔の火照りを隠すように、

いつもより足早に歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ