第八話 侵入はつらいよ①
「忘れてない?主人公は俺だよ?」
「誰に言ってんだ」
帝国軍事技術研究所へと入る段取りを探していた寅二郎たち。警備の配置や出入りする人間のルーティーンも把握した。特に今はコルダ丘陵での戦に向け、人の出入りが多い。敷地内の見取り図もマーリンの密書に残されており、あとはタイミングだけだった。
「よし、やるぞ」
シドが言うと、研究所から三人の兵士が出てくるところだった。見張りの兵士と挨拶を交わして街へと歩いていく兵士たちに続き、寅二郎たちはそっと後ろを付いていった。
見張りに見えない角を曲がった辺りでシドが走り寄り、声も上げさせず二人の腹を打ち昏倒させた。同時に、寅二郎が残りの兵士の首を絞めたまま、路地裏へと引きずって行った。
「さて、着替えよう」
「おう」
「ごめんなさい」
下着姿に剥いた兵士たちを縛り、
積まれた箱の裏へ並べ、
寅二郎たちは兵士の服装に着替えた。
「やっぱり胸のあたりが苦しいわね」
リラがしきりに胸を気にする。
「さらしで締め上げてみるか?」
シドが言うと、
「手伝ってあげようねぇ、リラちゅわん。あ痛っ」
寅二郎の脛が蹴られていた。
「バカやってないで行くぞ。見張りの交代の時間だ」
シドの言葉で皆、
帽子をかぶると来た道を取って返した。
角を曲がると、ちょうど見張りの交代の時間だったようだ。立っていた二人の後ろから交代の二人がやって来ていた。
「ご苦労様です」
と、その交代のどさくさにまぎれ、
代わった二人とともに所内に入ることに成功した。
それでもリラの鼓動は早くなっていた。
ごくりと唾を飲む音がやけに大きく感じたが、
二人が別の方向へ行くのを見ると息を吐いた。
「第一段階は成功、よね」
「そうだな、次もシド、頼むぜ」
「ああ、こっちだ」
シドは頭に建物の地図を思い浮かべ迷いなく歩いていく。二人も違和感を感じさせないよう気を張り続く。“関係者以外立ち入り禁止”の張り紙の付いた扉の前でシドが立ち止まった。
「ここだな」
シドがあたりを見回し、二人に言った。
「覚悟はいいな?」
二人が頷くのを確認し、そっと扉を開いた。
そこは地下へと続く階段になっていた。
極秘の《魔弾銃研究室》とはいえ、
トングたち研究者が活動しているはずなのに。
――下から流れてくる風に寅二郎は不吉を感じていた。




