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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第三章 ガルディア帝国編
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第七話 勇者PTヴァルニスへ行く⑪

 数日後。

 使節団はヴァルニスを発ち、王都への帰路についた。


 豪奢な馬車から、アンナたちは海を眺めていた。

 修行と戦いの日々を過ごした海は、今は驚くほど穏やかだ。


「……結局、クラーケンだけじゃなかったんだよね」

 リルルがぽつりと呟く。


「ええ。原因は“人”の方が重い」

 ヤスコが静かに答える。


 アンナは何も言わず、潮風を受けながら剣の柄を握り直した。

 トンペティの言葉が、まだ胸の奥に残っている。


(勇気と無謀は違う……)


 強くなる理由を、もう一度問い直す時間だった。


 一方、騎馬で進むエルザの認めた報告書は、

 早馬で先に王国へと送られていた。


 帝国製武器の流入を確認。

 武装船団による定期航路が存在。

 魔物被害海域と一致。

 ヴァルニスは“供給地”であり、主因ではない。


 こう最後に書き加えられた報告書の意味は重い。


 あくまで使節団としての帰途であったが、

 エルザははやる気持ちが抑えきれなかった。


王都・謁見の間。


 報告を読み終えた国王レオニス四世は、深く息を吐いた。


「……やはり、帝国か」


 居並ぶ重臣たちの間に、低いざわめきが広がる。


「ヴァルニスは利用されているに過ぎぬ」

「だが武器供給と魔物増加が連動している以上、

 放置はできません」

「下手に触れれば、国際問題になりますぞ」


 国王は玉座の肘掛けに指をかけ、ゆっくりと言った。


「だからこそ――

 “勇者”が必要なのだ」


 重臣たちの視線が、一点に集まる。


「表の外交では辿り着けぬ場所がある。

 帝国の内側を見ねば、真実は掴めぬ」


 沈黙。


「正式な決定は、時を待つ。

 だが……準備は始めよ」


 ようやく王国へと凱旋した一行。

 その夜、大聖堂に隣接した宿舎に戻ったアンナは窓辺に立ち、夜の王都を見下ろしていた。


 遠く、帝国の方角に広がる闇。

 まだ見ぬ戦場。

 まだ知らぬ選択。


(次は……あっち、なのかな)


 胸の奥で、小さく鼓動が強まる。


 こうして――

 勇者PT《暁の翼》の進路は、

 静かに“帝国”へと向けられ始めていた。

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