第七話 勇者PTヴァルニスへ行く⑩
夜、街は勝利の余韻に包まれていた。ギルドを始めそこかしこで明かりが灯り喜びの声が聞こえている。《武聖楼》でも宴が行われ大いに盛り上がっていた。
しかし、酒の匂いと笑い声から離れ、
アンナは一人、砂浜で夜の海を見ていた。
「……褒めてやれんのぅ」
背後から、低い声が落ちる。
「助けた。斬った。結果は上々じゃ。
じゃが――お主は“勝ち方”を誤った」
アンナは何も言えなかった。
「勇気とは、前に出ることではない。
仲間を信じ、任せ、待つことじゃ。
無謀は己しか見えぬ者のすること」
アンナが振り返ると、
トンペティの後ろにはアリアたち4人の姿もあった。
「馬鹿」
「心配したんだから」
「ホント“でたがり勇者”なんだから」
「でも良かった」
口々に言うが皆、涙を浮かべていた。
「ごめん。みんな」
するとアンナの瞳からも一筋の涙が落ちた。
あの場で感じた恐怖、己の未熟、
何よりこうして涙してくれる仲間の存在に。
――今、この世界で“生きている”実感に震えが起こり、
その場にへたり込んでしまった。
「ごめんねぇ」すすり泣くアンナに駆け寄る仲間たち。
その光景にトンペティは海を見たまま、ぽつりと続けた。
「今回の海が荒れた理由を、
本当に“あの魔物だけ”だと思っとるか?」
同じ夜――。
港から少し離れた倉庫街。
月明かりの下、エルザは静かに帳簿を閉じた。
(武器の流通量、輸送経路、護衛の質……)
帝国の刻印。
そして“魔物増加海域”と一致する航路。
(偶然じゃないわね)
遠くで、勝利を祝う鐘の音が鳴っていた。




