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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第三章 ガルディア帝国編
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第七話 勇者PTヴァルニスへ行く⑩

 夜、街は勝利の余韻に包まれていた。ギルドを始めそこかしこで明かりが灯り喜びの声が聞こえている。《武聖楼》でも宴が行われ大いに盛り上がっていた。


 しかし、酒の匂いと笑い声から離れ、

 アンナは一人、砂浜で夜の海を見ていた。


「……褒めてやれんのぅ」


 背後から、低い声が落ちる。


「助けた。斬った。結果は上々じゃ。

 じゃが――お主は“勝ち方”を誤った」


 アンナは何も言えなかった。


「勇気とは、前に出ることではない。

 仲間を信じ、任せ、待つことじゃ。

 無謀は己しか見えぬ者のすること」


 アンナが振り返ると、

 トンペティの後ろにはアリアたち4人の姿もあった。


「馬鹿」

「心配したんだから」

「ホント“でたがり勇者”なんだから」

「でも良かった」


 口々に言うが皆、涙を浮かべていた。


「ごめん。みんな」


 するとアンナの瞳からも一筋の涙が落ちた。


 あの場で感じた恐怖、己の未熟、

 何よりこうして涙してくれる仲間の存在に。


――今、この世界で“生きている”実感に震えが起こり、

 その場にへたり込んでしまった。


「ごめんねぇ」すすり泣くアンナに駆け寄る仲間たち。


 その光景にトンペティは海を見たまま、ぽつりと続けた。


「今回の海が荒れた理由を、

 本当に“あの魔物だけ”だと思っとるか?」


同じ夜――。


 港から少し離れた倉庫街。

 月明かりの下、エルザは静かに帳簿を閉じた。


(武器の流通量、輸送経路、護衛の質……)


 帝国の刻印。

 そして“魔物増加海域”と一致する航路。


(偶然じゃないわね)


 遠くで、勝利を祝う鐘の音が鳴っていた。

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