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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第三章 ガルディア帝国編
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第七話 勇者PTヴァルニスへ行く⑧

 最近のアンナたちは、“海を漂って”いた。

 仰向けの姿で海面に浮かんでいる。


(海から感じるマナの流れがとても心地いい。まるで一つに溶け込むよう…)


 太陽から降り注ぐ陽の光、

 背中に感じる潮の流れに包み込まれていた。


 夜、トンペティたちと囲む夕食の席で、

「随分飲み込みが早いのぅ。

 かなりマナの流れを感じられるようになったではないか」


「はい、おかげさまで」

 アンナの顔にも自信が見える。


「あれ、とっても気持ち良いよね」

 と料理を口にほおばり、リルルが言い、


「おい、はしたないぞリルル」

 とアリアが窘める。


「鍛錬の疲れが流れ出ていく気もするな」

 ヤスコが次の料理を迷っているようで、


「鍛錬の効果がより感じられるようになりましたね」

 とユキナが小鉢をヤスコにすすめた。


 そんな中、弟子の一人がトンペティのお代りを渡しながら言った。

「ですが最近、街では海の魔物による被害が噂になっていますよ」


「どういうことです?」


「この近くの商船で襲われる件数が随分増えているそうなんだ。

 ギルドでも問題視する声が高まっているらしいよ。

 緊急クエストが発注されるかもしれない」


 突然のミラステラの海での不穏、

 アンナたちも眉を顰める。しかし、


「そうなったら私たちが退治しちゃうよ!任せといて」


 元気よく空になった茶碗を掲げ、リルルが宣言した。

 皆も微笑み、和やかな食事は進んだ。


(緊急クエスト、海の魔物、早く強くならなきゃ)

 アンナは決意を新たにしたのだった。


 そして、突然その日はやって来た。


 いつものように海岸で剣を振っていたアンナたちの前に、

 弟子の一人が走ってきた。


「ギルドからの緊急招集です!海の魔物“クラーケン”の討伐依頼です!」


 トンペティも含め、屋敷で装備を整えた後、皆でギルドへと向かった。


「国主マルセロ卿からの依頼です。

 商船の行き交うメッシーナ海峡に、

 本来この海域に現れることは稀なクラーケンが居座り、被害は甚大。

 勇者PTの力も借りて速やかに討伐せよとのお達しです」


 ギルドマスターはアンナたちに頭を下げた。

「老師トンペティの下で修行中であるのは承知だが、力を貸してほしい」


 明日こちらも船団を組み、クラーケン討伐へ向かうという。その編成、工程、補給経路など打ち合わせは夜まで続いた。


「よし、詳細は分かったな。しかし海は奴らの庭だ。各々気は抜くな!」

 トンペティが締めて、その場は解散となった。


(私たちの今の力、すべてぶつけてやる――

 まだ足りないかもしれない。でも)


アンナの拳にはいつも以上に力がこもっていた。

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