第七話 勇者PTヴァルニスへ行く⑧
最近のアンナたちは、“海を漂って”いた。
仰向けの姿で海面に浮かんでいる。
(海から感じるマナの流れがとても心地いい。まるで一つに溶け込むよう…)
太陽から降り注ぐ陽の光、
背中に感じる潮の流れに包み込まれていた。
夜、トンペティたちと囲む夕食の席で、
「随分飲み込みが早いのぅ。
かなりマナの流れを感じられるようになったではないか」
「はい、おかげさまで」
アンナの顔にも自信が見える。
「あれ、とっても気持ち良いよね」
と料理を口にほおばり、リルルが言い、
「おい、はしたないぞリルル」
とアリアが窘める。
「鍛錬の疲れが流れ出ていく気もするな」
ヤスコが次の料理を迷っているようで、
「鍛錬の効果がより感じられるようになりましたね」
とユキナが小鉢をヤスコにすすめた。
そんな中、弟子の一人がトンペティのお代りを渡しながら言った。
「ですが最近、街では海の魔物による被害が噂になっていますよ」
「どういうことです?」
「この近くの商船で襲われる件数が随分増えているそうなんだ。
ギルドでも問題視する声が高まっているらしいよ。
緊急クエストが発注されるかもしれない」
突然のミラステラの海での不穏、
アンナたちも眉を顰める。しかし、
「そうなったら私たちが退治しちゃうよ!任せといて」
元気よく空になった茶碗を掲げ、リルルが宣言した。
皆も微笑み、和やかな食事は進んだ。
(緊急クエスト、海の魔物、早く強くならなきゃ)
アンナは決意を新たにしたのだった。
そして、突然その日はやって来た。
いつものように海岸で剣を振っていたアンナたちの前に、
弟子の一人が走ってきた。
「ギルドからの緊急招集です!海の魔物“クラーケン”の討伐依頼です!」
トンペティも含め、屋敷で装備を整えた後、皆でギルドへと向かった。
「国主マルセロ卿からの依頼です。
商船の行き交うメッシーナ海峡に、
本来この海域に現れることは稀なクラーケンが居座り、被害は甚大。
勇者PTの力も借りて速やかに討伐せよとのお達しです」
ギルドマスターはアンナたちに頭を下げた。
「老師トンペティの下で修行中であるのは承知だが、力を貸してほしい」
明日こちらも船団を組み、クラーケン討伐へ向かうという。その編成、工程、補給経路など打ち合わせは夜まで続いた。
「よし、詳細は分かったな。しかし海は奴らの庭だ。各々気は抜くな!」
トンペティが締めて、その場は解散となった。
(私たちの今の力、すべてぶつけてやる――
まだ足りないかもしれない。でも)
アンナの拳にはいつも以上に力がこもっていた。




