第七話 勇者PTヴァルニスへ行く⑥
初対面でのセクハラ祭りに疑惑の目を向けるアンナたち《暁の翼》。しかしその視線もどこ吹く風、弟子から治療を受けながら、トンペティは言った。
「お主たちが、日々真面目に研鑽を積んでおるのは分かった」
「え?」アンナたちが驚きの声を上げる。
「体つきを見れば、分かるものじゃよ。
そこで、お主たちへの修行の方向性が見えた」
先程とは打って変わって真面目な表情にアンナたちが息をのむ。
「今から街へ行き、水着を買ってくるように。
ビキニじゃよ。ビ・キ・ニ!」
「はぁ?」
真面目に修行が始まるのかと思いきや、水着を買って来いとは。アンナたちの頭の中は“?”でいっぱいになったが、渋々買い出しへと向かった。
さすがは海沿いのリゾート地、すぐに海産物を取り扱う屋台や、土産物屋が並ぶ街へと出た。そこで水着を扱う店を見つけ中へと入った。
「はぁ。どういうつもりかわからないけど、
これはこれでいいんじゃない?」
ヤスコは意外に乗り気の声を上げた。
「だよね!いろいろかわいいのがそろってる」
リルルが一着持ち上げ声を上げた。
「実は私、水着って買ったことがなくて…」
「ああ、私も学校指定の物しか持っていなかったな」
ユキナとアリアも前世を思いながら辺りを見回している。アンナは、
「あの爺ぃ、何のつもりよ。『ビキニしか駄目』だなんて」
と口では言いながらも、
次々と水着を取り上げては、目を輝かせている。
そんな微笑ましいリーダーの姿に一同も微笑み、
「よし!みんな決まったね!じゃぁ行こう」
とアンナの号令の下、水着を買って店を出たのだった。
屋敷で水着に着替えた一行は、トンペティの待つビーチへとやって来た。
「うほほ、眼福じゃのぅ」
サングラスをずり下げ、トンペティが喜びの声をあげた。
アンナは髪の色と合わせた赤いビキニ。少し日焼けした肌によく似合っている。
アリアは青と白の縦ストライプ柄、そのせいか普段よりスリムに見える。
リルルはひまわりモチーフの黄色と茶色のチェック柄、フリル付で可愛らしい。
ヤスコは黒で紐の結び目に輪っかの付いたセクシー系、大人の色気を感じさせた。
ユキナは純白、神聖でありながらどこか背徳感が漂っている。
「で、これから私たちは何をすればいいんですか?」
「うむ、お前たちにはマナ操作の基本、マナの流れを感じてもらう」
そういうと、トンペティは五人を波打ち際に立たせた。
「行くぞ!……ふん!」
トンペティが気合を入れると五人に大気の圧が押し寄せ、吹き飛ばされた。
「きゃぁ!」どぼんとアンナたちは海へと放り込まれ、
「これは?」とアンナがすぐに立ち上がる。
トンペティの秘められた力、その一端に触れ、冷や汗をかいていた。
「感じたか?今のはわしがマナを気合に変換し、
大気を震わせたわけじゃが、もう一度行くぞ」
再び圧が押し寄せる。しかし、今度はアンナの周り、腰までつかった海水も震えているのが感じられた。
「マナとは世界を流れる潮のようなもの。
波を読めぬ者は、技も扱えぬ」
「このマナの流れを掴めれば、こういったことも出来る」
トンペティも海へとつかり、目をつむると、
「はぁ」気合とともに海面へ手刀を繰り出す。
瞬間、世界から音が消え、
――海が割れた!
ゴパッ
と音を立て海水が立ち上ると、100メートルほどだろうか地面が顔を出していた。
「今のも使い方の一端でしかないが、まずはマナの流れを感じよ。
明日から海へ入りいつもの稽古をすべて海の中でせよ。防具は無しでの。
ほっほっ、今日は帰るぞ」
と、言いながら屋敷へと帰るトンペティ。
後を追いながら今の出来事を思い出すアンナたち。
「私泳いだこと無いんですが、大丈夫かな」ユキナが不安を口にする。
「じゃぁそれも含めて修行だな、ははは」アリアが軽く笑い飛ばし、
「もぅ他人事だと思ってぇ」珍しくユキナがぷんすか怒っている。
(マナ操作の基本……流れを感じる)
トンペティの圧、海水から感じたマナ、アンナは濡れた髪をかき上げながら、
(明日から、絶対ついていく……!)
と静かに拳を握るのだった。




