第七話 勇者PTヴァルニスへ行く③
《ステラ宮殿》に馬車が停まると出迎えの兵士がやって来た。
「ようこそ、ミラステラへ。国主のマルセロ・ディアス様がお待ちです」
出迎えた兵士に続き《暁の翼》の面々を筆頭にリ・エスティーネ王国使節団が豪奢な扉を抜けた。そこは赤い絨毯が敷かれた大広間。天井から吊られた貝殻とガラス細工のシャンデリアが見え、両脇に全身鎧がいくつも並べて飾られ手にはそれぞれ違った旗を持っていた。ヴァルニスに加盟する国々のものだ。絨毯もよく見ると“波紋”を模している。
ここからでも分かる大きく鍛えられた体に、海で焼けたのであろう銀髪。ひじ掛けにかけた手に顎を乗せ、こちらを見ているその視線は鋭い。
しかし、アンナたちに気づいた途端、鋭かった瞳がふっと緩み──マルセロは豪奢な椅子から迷いなく立ち上がった。
「ようこそ、ミラステラへ!
リ・エスティーネ王国使節団の皆さん。
私が国主のマルセロ・ディアスです」
気さくに話しかけられて戸惑うアンナたち一行。
だがアンナはエルザに目配せすると、
(深呼吸……大丈夫。訓練通りにやるだけ)
「お招きくださり光栄に存じます。マルセロ・ディアス卿。
《暁の翼》以下リ・エスティーネ王国使節団、
ただいま到着いたしました」と、胸に手を当て頭を下げた。
「うむ、挨拶も堂に入ったものだね。“勇者様御一行”は。
しかし、私は国主と言っても選挙で選ばれた人間でね。
実は格式ばったのは苦手なんだ」
と言いながら、椅子を降りこちらに向かって歩いてきた。
「歓迎式典ではそうも言っていられないが、今はこうさせてほしい」
と、アンナに向かって手を差し出してきた。笑顔のマルセロにまっすぐ笑顔を返したアンナはそのごつごつとした手を握った。
「よろしくお願いします。マルセロ・ディアス卿」
「ああ、ヴァルニスを楽しんでいってほしい。勇者殿」
こうして、アンナたち《暁の翼》の外交デビューが始まった。




