第七話 勇者PTヴァルニスへ行く②
海からの風が、砂漠の乾いた空気を押し返すように吹き抜けた。
ついに商業都市国家群ヴァルニスの首都、ミラステラへと到着したのだ。
馬車がゆっくりと“結界門”へ近づくにつれ、白壁と青屋根の街並みが光を反射してきらめいた。金と青の幾何学模様が刻まれた巨大なアーチ門──
ミラステラを包む防護結界の出入り口だ。
門の内側で薄い膜が揺らぎ、陽光を受けて淡く虹色に光る。
馬車がくぐった瞬間、空気がひとつだけ変わったような感覚が走る。
次の瞬間、果物と香辛料の甘い匂い、潮風、焼き魚の香り──
異国の匂いが、洪水のように流れ込んできた。
視界の先では、市街を貫く大路が海へとまっすぐ伸びている。
道の両側には、カラフルな日よけ布を張ったバザールの露店が立ち並び、
赤や青の布地、銀細工、ガラスの香油瓶が太陽光に反射して眩しい。
白壁の建物のあいだから覗く青い海。
遠くには多数の帆船が停泊し、白い帆と青い水平線が重なって揺れていた。
まさに「海と砂漠が出会う都市」と呼ばれる所以だった。
バザールの人々は、勇者一行の行列に気づくと歓声をあげ、
黄金のランタンや花束を掲げて歓迎の声を投げかける。
馬車の窓越しでも熱気が伝わるほどだ。
街の中央にそびえる高台には、
青・白・金で彩られた巨大な宮殿《ステラ宮殿》が悠然と佇んでいる。
風に揺れる垂れ幕、噴水の水煙、回廊を囲むモザイク模様──
それはまるで一幅の絵画のような光景だった。
思わず息を呑んだアンナに、リルルが身を乗り出す。
「見て見て!街がキラキラしてるよ!」
「ミラステラって、こんなに華やかなんだ……」
ユキナが目を丸くする。
アリアは鼻をくすぐる香りに眉を上げた。
「魚と香辛料の匂い……港町の雰囲気、嫌いじゃないわね」
「うわー、露店の布きれがめっちゃ綺麗……絶対買うわ」
ヤスコが呟き、
そんな仲間たちにエルザが静かに微笑んだ。
「ようこそ、ミラステラへ。ここから先は、皆さんが主役ですよ」
アンナたちの旅は、ついに新たな舞台へと踏み出したのだ。




