第七話 勇者PTヴァルニスへ行く①
新規ダンジョン《灰哭の巣窟》を踏破し、
《暁の翼》という名前が王都に知れ渡った頃、
アンナ達勇者PTは国王に召集を受けた。
謁見の間には国王のみならず、聖母マリアや王国騎士団の面々の姿もあった。
「神代アンナ以下《暁の翼》、お召しにより参上いたしました」
国王に跪き、頭を下げる。
「うむ、《暁の翼》の名、王国に響き渡っておるぞ」
王は微笑み、顎髭を撫でた。
「早速ではあるが、……」
と前置きし、
国王レオニス四世は視線を鋭いものに変え、言った。
「今回お主たちを呼んだのは、
会ってきてもらいたい人がおる。
その依頼をするためよ」
「“人”ですか、その依頼のためにこれだけの方々がここに?」
「いよいよお前たちには国の外へと出てもらう。
行く先は商業都市国家群ヴァルニス。
そこで無天老師とも言われる武聖、トンペティに会ってもらう」
騎士団長が説明を引き継いだ。
五大国の要請により、召喚された勇者パーティ。彼女たちのお披露目として、友好使節団を派遣するのだという。ゆくゆくは各国を回り、勇者の名声を高め、対魔王軍への旗頭となる。その第一歩が隣国ヴァルニスに決まったということだ。
「王国はいつまで勇者を独占しているつもりだ、
などと、うるさくてのぅ」王は顔をしかめ、
「トンペティはマナ操作に長けている。
お前たちの鍛錬もしてもらう手はずになっている」
王国騎士団長が言った。
「しっかり務め上げ、無事に帰ってきてくださいね」
マリアが手を組み、祈りを捧げた。
国同士の一大イベント、その渦中に放り込まれ緊張の走る《暁の翼》の面々、しかしアンナが顔を上げて言った。
「王命、しかと拝命いたしました」
床についている拳に力が入る。
(いよいよ、はじまるのね)
と、アンナの瞳にも決意の光が宿った。
翌日、アンナたちは王都を出立した。
友好使節団ということもあり、街道にはひときわ目を引く豪華馬車が二台並んでいた。先頭と最後尾には、陽光を跳ね返すほど美麗な鎧を着た王国騎士団が騎馬で護衛している。
普段の冒険ではまず見ることのない、まさに“国の行列”だった。
「あはは!映画みたい!」リルルが無邪気にはしゃぎ、
「ホントね、物語のお姫様が乗ってそう」ユキナも嬉しそうだ。
「何だか、豪華すぎて緊張しちゃうな」
アンナは座席の刺繍を指先でなぞり、目を丸くする。
「冒険者仕事だと、こうはいかないからなぁ」
「乗合馬車なんて座面が板で、お尻が痛いんだから」
アリアとヤスコの軽口に、馬車の中はぱっと明るくなった。
そのうち、一騎が馬車に近寄り、アンナたちに声をかけた。
「お久しぶりですね。みなさん」
ダンジョン制圧作戦でともに戦った、エルザだった。
エルザは少し声を落として付け加える。
「国同士の交流行事……皆さんも緊張されているでしょうが、
ヴァルニスは観光地としても有名なんです。
海沿いのリゾートも多くて……」
そこで、柔らかく微笑んだ。
「せっかくですし、少しは英気を養ってくださいね」
「リゾート!? やったぁ!」
リルルが思わずユキナの手を取り、二人ではしゃぐ。
そんな和気あいあいとした雰囲気に包まれながら、
使節団はヴァルニスへの道を進んでいった。




