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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第十一話 異世界はつらいよ③

「トラジロウ……」


 救護室を出た寅二郎にそう声をかける者があった。

 それは一人追いかけてきた、ヤスコだった。


 寅二郎が振り返ると、俯いたままヤスコが言った。


「“魔王軍残党による暗殺”、

 アンナにとても重い物を背負わせてしまった。

 それに、トラジロウ。――あなたにも」


 寅二郎は、分からない、という風に首を傾げる。


「“皇帝陛下の死の真相”、それを知りたがる者たち。

 それらに狙われ続けるわ。あなたはずっと――」


 ヤスコは顔を上げ、寅二郎に目を合わせた。


 その目をまっすぐ見返し、寅二郎が言った。


「そんなことか。

 俺は“ただの放浪者”、叩かれたって煙も出ねぇよ」


 寅二郎はそう言って、笑った。

 ヤスコは肩を震わせ、言葉を続ける。


「ずるい女ね、私は……。

 あなたならそう言ってくれると分かってた」


「さすがは《光輪の乙女たち》の“黒”? だっけか」


「ええ、私は真っ黒、なのよ」


「はは、いいじゃねえか、黒」


「“ミステリアスもっこり”って感じか?」


「!?」


「いい女だよ。お前も」


 寅二郎は自分の頭を掻きながら、

「お前も背負ったんだろ? その“重い物”ってのを――

 だから、いいんだよ。お前も胸張って立ってりゃな」

 そう言って笑顔を見せた。


 ヤスコの目から涙が溢れた。


 “ステータス0”、“セクハラ勇者”などと追放され、

 それでも魔王を倒し、世界を救う。そんな男が――。


(私を、ひとりの“女”として認めてくれた)


 だからヤスコは胸を張った。目の前の男に見せつけるように。


「おお、ナイスもっこり」


 そう言って歩いていく寅二郎の背中が見えなくなっても、

 溢れる涙を拭くこともせず、ヤスコは立ち続けるのだった。

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