第十一話 異世界はつらいよ②
ガルディア帝国皇帝レギウス三世崩御――。
しかも、“魔王軍残党による暗殺”
その知らせは、世界各国を大いに揺るがした。
その混乱のままに国葬儀が執り行われて数日後、
レギウス城の救護室に、寅二郎たちやアンナたちの姿があった。
レギウス三世に斬り飛ばされたシドの右腕は、どうにか接合できたものの、リラやユキナの治癒魔法でも、まだ完全には回復していなかった。
「ごめんなさい、シドさん。
あたしの治癒魔法でも傷が残るかも……」
ユキナは治癒の光を当てながら、シドに頭を下げた。
「いやいや、あの状態から繋がっただけで十分だ。
それに、ユキナやリラが交代で治療に当たってくれて……」
「ありがとう」シドがリラとユキナ、二人に頭を下げた。
「そんな!」「そうだよ。シド」二人は戸惑っている。
そんな空気を変えようと言うのか、
「しかし、アンナが“王様”ねぇ?」と、寅二郎が言った。
そのセリフに、アンナは手を振り、
「止めてよ、もう」と寅二郎を睨む。
アンナが王に――。レギウス三世の国葬で、アンナは宣言したのだ。
帝国を解体し、かつての国割りを復活させる。そして各国の王が集う諸侯会議によって、旧帝国領全体の方針を決めていく。その一国、レギオンブルクの王にアンナが就任する、と。元々帝国は皇帝レギウス三世の絶対君主制、それが崩れた今、こうする他、道が無かったのだ。
そして、アンナは思い出していた。ヤスコに呼び出されたあの夜を――。
燭台の明かりが一つだけ灯る、薄暗い室内。
「私が王に? そしてシルバージル将軍を私の補佐に?」
アンナは困惑の声を上げる。
そんなアンナにヤスコは眉を寄せる。
「そうよ。ただでさえ皇帝のいなくなった帝国はガタガタ。
そこへ皇帝を廃したのが私たちじゃ……世界戦争一直線ね」
そう言って大仰にため息をつくヤスコ。
ここへ呼び出されたこと自体に首を捻るのはシルバージルだ。
「しかし、そんな話を何故私に?」
「シルバージル将軍、分かっているでしょう? あなたも共犯、ってことを」
「ヤスコ殿、君は……」
「ヤスコ!」アンナも思わず声を上げた。
最後に二人の顔を見回したヤスコが告げた。
「いいえ。持ってもらうわ。“覚悟”を。
私たちの信じる、“正義”のために――」
あの夜、三人は“真相”を胸に秘め、
己の信じる正義のために“覚悟”したのだった。
(皇帝陛下の“世界”は認められない。
だから私は、“みんな”のための王になる!)
アンナが決意を新たにする中、
「ユキナ様!来てください、急患が!」
救護兵が飛び込んできて、すぐさまユキナを呼んでいる。
「すぐ行きます! リラさんもお願いできますか?」
「うん、分かった!」
そう言って二人で走って出ていく。
「どうしたんだい? あれは」寅二郎が尋ねると、
「ああ、あの二人、
俺の治療をきっかけに仲良くなったみたいで、
今では聖ローマン教まで介して、
新しい医療体制を作ったりしているらしい」
シドが笑顔で答えた。
そして寅二郎も、「そうか」と笑顔を見せ、
「そろそろかな」、そう呟くのだった。




