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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第十一話 異世界はつらいよ②

 ガルディア帝国皇帝レギウス三世崩御――。

 しかも、“魔王軍残党による暗殺”

 その知らせは、世界各国を大いに揺るがした。


 その混乱のままに国葬儀が執り行われて数日後、

 レギウス城の救護室に、寅二郎たちやアンナたちの姿があった。


 レギウス三世に斬り飛ばされたシドの右腕は、どうにか接合できたものの、リラやユキナの治癒魔法でも、まだ完全には回復していなかった。


「ごめんなさい、シドさん。

 あたしの治癒魔法でも傷が残るかも……」


 ユキナは治癒の光を当てながら、シドに頭を下げた。


「いやいや、あの状態から繋がっただけで十分だ。

 それに、ユキナやリラが交代で治療に当たってくれて……」


「ありがとう」シドがリラとユキナ、二人に頭を下げた。


「そんな!」「そうだよ。シド」二人は戸惑っている。


 そんな空気を変えようと言うのか、


「しかし、アンナが“王様”ねぇ?」と、寅二郎が言った。


 そのセリフに、アンナは手を振り、


「止めてよ、もう」と寅二郎を睨む。


 アンナが王に――。レギウス三世の国葬で、アンナは宣言したのだ。

 帝国を解体し、かつての国割りを復活させる。そして各国の王が集う諸侯会議によって、旧帝国領全体の方針を決めていく。その一国、レギオンブルクの王にアンナが就任する、と。元々帝国は皇帝レギウス三世の絶対君主制、それが崩れた今、こうする他、道が無かったのだ。


 そして、アンナは思い出していた。ヤスコに呼び出されたあの夜を――。



 燭台の明かりが一つだけ灯る、薄暗い室内。


「私が王に? そしてシルバージル将軍を私の補佐に?」


 アンナは困惑の声を上げる。

 そんなアンナにヤスコは眉を寄せる。


「そうよ。ただでさえ皇帝のいなくなった帝国はガタガタ。

 そこへ皇帝を廃したのが私たちじゃ……世界戦争一直線ね」


 そう言って大仰にため息をつくヤスコ。

 ここへ呼び出されたこと自体に首を捻るのはシルバージルだ。


「しかし、そんな話を何故私に?」


「シルバージル将軍、分かっているでしょう? あなたも共犯、ってことを」


「ヤスコ殿、君は……」

「ヤスコ!」アンナも思わず声を上げた。


 最後に二人の顔を見回したヤスコが告げた。


「いいえ。持ってもらうわ。“覚悟”を。

 私たちの信じる、“正義”のために――」




 あの夜、三人は“真相”を胸に秘め、

 己の信じる正義のために“覚悟”したのだった。


(皇帝陛下の“世界”は認められない。

 だから私は、“みんな”のための王になる!)


 アンナが決意を新たにする中、


「ユキナ様!来てください、急患が!」

 救護兵が飛び込んできて、すぐさまユキナを呼んでいる。


「すぐ行きます! リラさんもお願いできますか?」

「うん、分かった!」


 そう言って二人で走って出ていく。


「どうしたんだい? あれは」寅二郎が尋ねると、


「ああ、あの二人、

 俺の治療をきっかけに仲良くなったみたいで、

 今では聖ローマン教まで介して、

 新しい医療体制を作ったりしているらしい」


 シドが笑顔で答えた。


 そして寅二郎も、「そうか」と笑顔を見せ、

「そろそろかな」、そう呟くのだった。

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