第十話 決戦はつらいよ⑥
《バベルの塔》から三魔将の影が消え、
「よくやった、アンナたち」寅二郎が言う。
しかしその目は、レギウス三世に向けたままだった。
「ふむ、所詮奴らはこの世界のバグ。
朕の創る“完全なる世界”には不要のものだった。という訳か」
レギウス三世は何事も無かったかのように言ってのけた。
「皇帝陛下。いやレギウス!
あなた、それでも……」
アンナが叫ぶその最中、
「危ない!」アリアが盾で“ソレ”を弾く。
「!?」アンナが目を見開く。
あらぬ方向から、光線が発射されたのだ。
「この“新世界”の主たる、朕に対し不敬であるぞ」
レギウスの放つ圧が一段と強まる。
しかし、その圧を振り切るように、
「《サンダーボルト》!」リルルが雷属性魔法を放つ。
レギウスは右手でそれを払いのけ、そこへアンナが斬りかかる。
「ふん」レギウスはそれも右手で受け流した。
受け流され、たたらを踏んだアンナだが、
そのまま走り抜け態勢を立て直す。
「やっぱりな」
そんなアンナたちのやり取りを見ていた寅二郎が言った。
「どういうこと?トラジロウ」剣を構えながらアンナが問うた。
「ああ、悪い」寅二郎も剣を構え答えた。
「あいつ、右手、つか右側半分、おかしくねえか?」
そう言いながら、寅二郎もレギウスに斬りかかった。
キイィーン
寅二郎の剣を受け止めた“右手”が金属音を立てる。そして、ビィッ! 今度もレギウスとは別の方向から光線が飛び、寅二郎を襲う。
「おっと」寅二郎がしゃがみ後ろへ下がる。
「こいつの固さ。それに出所不明の光線……」
寅二郎が言うのに合わせ、アンナたちも身構える。
「この謎が解けなきゃ、こいつはぶん殴れそうにないな」
寅二郎のセリフに、
「フハハハ! 謎? 謎だと言ったか?」レギウスはそう笑った。
「これは謎などでは無いな。
これは“事実”だ!この“新世界”の主が朕である。……というな」
そう言うと、レギウスの右半身が黒く染まっていく。
「お前!それ、まさか!」寅二郎が声を上げる中、
「そうだ!これこそが完成された新世界、
それを統べる、――朕の真の姿だ!」
レギウスが両手を天に掲げる。
「お前、自分を“ゴーレム”に!」
寅二郎が叫び、アンナたちが身を固くする中、
《バベルの塔》を取り囲む櫓。その腐り落ちた木材の内側から姿を現した“ソレ”が、寅二郎たちを取り囲むように組み上がっている。
――“ゴーレム部隊”。それらが一斉に口を開く。
「周り全部が? これ、“ゴーレム部隊”なの!?」
アンナが叫ぶ。
そして“ゴーレム部隊”の一体一体が口を開き、その奥に光が収束していく。
「みんな、こっちへ!早く!」アリアが叫び、
ビィィ
全方向からの光線。「きゃぁ!」アンナたちが叫びを上げる。
「ぐうぅ」土煙が晴れていく中、アリアの《グレート・ウォール》で第一射を防いだアンナたち。しかし、それは一時しのぎ。アンナたちの頬に汗が流れる。
「フハハ、さすがは“勇者PT”と言っておこうか。
しかし、お前はどうした?“追放勇者”よ」
レギウスが笑い、アンナが振り返ると、寅二郎が立っていた。
全方位からの光線を躱し切れず、身体のあちこちから血を流して――。
「トラジロウ!」アンナが叫ぶ。
だが、“新世界秩序”の主たるレギウスの恐ろしさは、ここからが本番だった。




