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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第十話 決戦はつらいよ⑤

“元”魔王軍の三魔将との決着をつけるべく、ベルゼの影へと走るアンナたち。

 その身にはユキナの防御魔法、《サンクチュアリ・シールド》の光。


「はあああぁ!」


 アンナは剣に白い光を纏わせ、ベルゼの影に切りかかる。


 ベルゼの影は体を捻って躱し、バックステップ。

 そして広げた両手の上には4つの黒い火球が出現。


「させない!」


 それを見たヤスコが炸裂弾を投げつける。


ゴババン!


 二つの火球に命中し、その場で爆発。

 しかし、残りの火球がアリアたちに迫る。


「《グレート・ウォール》!」


 アリアの身構えていた盾が蒼く光る。


――グレート・ウォール。自己強化の効果を装備品にまで広げる、上位版の魔法だ。その蒼い光を纏った盾が、黒い火球を弾き飛ばす。


 それでもアンナとヤスコ、二人の斬撃を躱しながら、

 ベルゼの影は、黒い火球を放ち続ける。


「ククク、無駄だぁ!もはや、そやつは負のマナそのもの。

 “ゆらぎ”ある限り、止めることなど誰にも出来んわ!クハハハ!」


 口から血をまき散らしながら、ハルモニアが笑い出す。

 それに呼応するように、ベルゼの影はその瘴気を濃くする。


ビキビキビキィ!


 ベルゼの影、その足元がひび割れ、


ズズズズズ!


《バベルの塔》を囲む櫓、その木材部分が黒く変色。腐り落ち崩れ始める。瘴気をまき散らし暴風のように荒れ狂うベルゼの影。しかし、


「《アース・スピア》!」リルルが叫ぶと、


ズガガガガ!


 地中から槍のように尖った、いくつもの岩がベルゼの影を追う。


「無駄だと言ったろう!

 その程度の速度ではベルゼの影は捕らえられん!」


 ハルモニアはそう叫ぶ、


 だが、その目には、アンナへと向かう光の筋が映っていた。


「何だ?」ハルモニアが顔を巡らせると、


 アリアから、リルルから、ユキナから、それぞれの光がアンナへ向かう。


ドン!


 ベルゼの影が岩に背を打ち付けた。


「何だと?」と、そこで初めてハルモニアは気づいた。リルルの魔法は、ベルゼの影を直接狙ったものではなかった。逃げ場を塞ぎ、ハルモニアもろとも囲い込むために放たれたのだ。


「今だ!アンナ!」ヤスコが叫び、アンナの前に屈みこむ。アンナへの攻撃を警戒し、その身からも光が繋がる――アンナの元へと。


「うん!任せて!」


《暁の翼》の仲間たちから集まった光を束ね、アンナが剣を振りかぶる。


「あれは……」ハルモニアの目に“ソレ”が映る。


 アンナの剣先、《暁の翼》たちの上方に浮かぶ十字架。


 聖属性最上位魔法の光が――。


ガアアアアァ!


 ベルゼの影が黒い火球を放とうとした、その真上から――。


「《グランドクロス》!」


 光り輝く巨大な十字架がベルゼの影、そしてハルモニアに降り注ぐ。


ドゴーーーーン!


 聖なる十字架に押しつぶされ、煙となって消えていくベルゼの影。

 その下敷きとなったハルモニアも足元から煙を上らせていく。


「クハハハハ! これほどの“ゆらぎ”!

 これが“人”の力か。……美しい……」


 そう言い残し、ハルモニアは煙となって消えた。

 その顔は満足げな微笑みに見えた――。


「結局――」アンナは肩で息をしながらも、


「あなたは揺らぎを生み、

 ただ世界を混乱させるだけ。

 そんな歪みから――

 私たちは、皆を守り抜く!」


 そう叫んだ。


そして、暴風のようだった三魔将の影は《バベルの塔》から去った。


「あとは……」と、アンナは剣先を向けた。


「あなただけよ!皇帝、レギウス三世!」

《バベルの塔》の中央に立つ皇帝レギウス三世――新世界秩序そのものへ。

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