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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第十話 決戦はつらいよ④

 白い光を立ち上らせる寅二郎とレギウス三世。

 両者が睨みあい、《バベルの塔》に風が吹き荒れる中、


「アンナ!」ヤスコが《調律者》ハルモニアに指を向ける。


「あいつもヤバい! あいつ、魔族だ!」そう叫んだ。


 アンナたちも一斉にハルモニアを睨みつけた。

 すると、ハルモニアがフードを脱いだ。

 黒い瘴気を立ち上らせ、呟く。


「ほう、ここまで抑えた瘴気でも感知する者がいるとはな」


 くっくと笑うと、アンナに向けて言った。


「そうだ。私は三魔将《調律者》ハルモニア。

 マナ世界を調律するため。

――世界が最も美しく歪む瞬間。

 それを見るために、皇帝の傍に侍っていたわけだが……」


 ハルモニアが一歩前へ出る。


「事、ここに至ると私も戦わざるを得んか」


 そう言って、瘴気を全身から噴き出させた。


「アンナさん!」ユキナも駆け寄り、

 《暁の翼》たちがハルモニアの前に武器を構える。


 ハルモニアは《暁の翼》一行を見回し、


「勇者よ。貴様、

 “世界を揺らす”、その覚悟はあるか?」


 そう言って、何もない空間に手を突き入れた。


ビキビキィ


 空間がひび割れるような音が響く。


 アンナはぐっと息を呑んだ。が、


「“覚悟”ならあります!

 皇帝の創る世界を認めない。そのための“覚悟”なら!」


 アンナは剣を構え、全身から白い光を立ち上らせる。


「では、見せてもらおう。――その“覚悟”を。

 皇帝の創る世界の揺らぎ、それを超える最大の歪みを!」


 ガフっと血を吐きながらも、ハルモニアが手を引き抜いていく。

 ひび割れる音が響く中、黒い炎で形作られた“ソレ”を。


「あれは!」アリアが盾を構え、汗を滴らせる。


「これでいい……私は、世界最大の“揺らぎ”を見届けられる」

 ハルモニアがそう呟き、ついに“ソレ”を完全に引き抜いた。

 

 その影を見て、アンナは息を呑んだ。


「三魔将、ベルゼ!」アンナが叫ぶ。


 ハルモニアの隣、倍する背丈の影。それは三魔将《破壊者》ベルゼの影だった。ハルモニアを越える瘴気の嵐を巻き起こし、金色の瞳がアンナを捉える。そして、


ガアアアァ!


 そう叫ぶ。凄まじい風が吹き荒れ、《バベルの塔》を揺らす。


「アンナ!」寅二郎が叫ぶ。しかし、


「大丈夫!任せて!」アンナはそう叫び返した。


 アンナの脳裏に、かつての光景が浮かんだ。

 リ・エスティーネ王国で、召喚されたばかりの頃に急襲された時のこと。

 為す術もなく、寅二郎の背中で歯噛みするしかなかった、あの時のことだ。


(もう、あの頃のままじゃない!トラジロウだけじゃない!)


 そして、ベルゼに剣を向け叫ぶ。

 

「“私たち”だって“勇者”なんだ!」


「おう!」《暁の翼》のメンバーも叫ぶ。


“正”と“負”、“過去”と“現在”。

全てに決着をつけるべく、アンナたちは三魔将との決戦へと走り出した。

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