第十話 決戦はつらいよ③
寅二郎はアンナたち《暁の翼》と共に、《バベルの塔》へと辿り着いた。
「あそこから中へ入れるぞ!」
そう言って櫓の間を潜り抜け、内部へと駆け込んだ。
中は明るく照らし出された闘技場のようで、
中央に人影が見えた。
「あれが皇帝か!?」
皇帝を含め、男女三人が立っている。
女は、皇帝に持ち上げられているように見えた。
寅二郎はその女を見て叫んだ。
「フジコ!」
近づくにつれ見えてくる。
因縁の女、フジコ。
その背中から、レギウス三世の腕が突き出している。
燃えるような赤髪と、その背中から滴り落ちる、同じ赤い色。
「何やってんだ!コラァ」寅二郎は再び叫ぶ。
「ふん。勇者どもか」レギウス三世はそう言うと、
フジコから腕を引き抜き、放り投げた。
「!?」寅二郎は駆ける速度を上げ、
宙を舞うフジコを抱き留めた。
その勢いのまま、床に倒れ込む。
「トラジロウ!」アンナたちも立ち止まり寅二郎らに目を向ける。
「フジコ!おいフジコ」寅二郎が抱えたフジコに声をかける。
「フフ、トラジロウ。来たのね」フジコは笑った。
「おい!ユキナ!」寅二郎が振り返り叫ぶ。
ユキナがこちらへ走り出す。しかし、
「もう大丈夫。私の“仕事”は終わったの」フジコはそう呟く。
「だから。……あとは任せたわ」そう言って目を閉じた。
「おい!フジコ!目を開けろって!」寅二郎が叫び、
「お願い!《ヒール》!」ユキナが治癒魔法の光を降ろす。
しかし、フジコの心臓はすでに貫かれ、その身体は冷たくなっていた。
――光に包まれても、フジコが目を開けることは無かった。
「!!」寅二郎は歯を食いしばる。ユキナも治癒魔法を解こうとしない。
ポトリ、とフジコの腕が床に落ちた。
「ふん、朕の“完成された世界”に“未来”は要らぬ。
ここに立っている以上、貴様らも“異物”。排除しか無いか」
レギウス三世が言った。
「皇帝!あなた!」アンナたちが身構えその身から光を立ち上らせる。
寅二郎もフジコをそっと床に寝かせると、立ち上がった。
その身から白い光を立ち上らせて、
「“完成”?“世界”?」ぐっと目を閉じ、そして目を開く。
「んなこたぁどうでもいいんだよ!」そう叫ぶと、
「てめぇはフジコを殺した!
だから、――俺はお前を許さねぇ!」
そして剣を抜き取り、レギウス三世に向ける。
剣を向けられたレギウス三世は、言い放つ。
「“異物”は排除する。――それだけだ」
寅二郎とレギウス三世、二人の放つ圧がぶつかり、風が吹き抜ける。
魔王無き世界、新世界秩序を巡る決戦が、ついに始まった。




