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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第十話 決戦はつらいよ③

 寅二郎はアンナたち《暁の翼》と共に、《バベルの塔》へと辿り着いた。

「あそこから中へ入れるぞ!」

 そう言って櫓の間を潜り抜け、内部へと駆け込んだ。


 中は明るく照らし出された闘技場のようで、

 中央に人影が見えた。


「あれが皇帝か!?」

 皇帝を含め、男女三人が立っている。

 女は、皇帝に持ち上げられているように見えた。

 寅二郎はその女を見て叫んだ。


「フジコ!」

 近づくにつれ見えてくる。

 因縁の女、フジコ。

 その背中から、レギウス三世の腕が突き出している。

 燃えるような赤髪と、その背中から滴り落ちる、同じ赤い色。


「何やってんだ!コラァ」寅二郎は再び叫ぶ。


「ふん。勇者どもか」レギウス三世はそう言うと、

 フジコから腕を引き抜き、放り投げた。


「!?」寅二郎は駆ける速度を上げ、

 宙を舞うフジコを抱き留めた。

 その勢いのまま、床に倒れ込む。


「トラジロウ!」アンナたちも立ち止まり寅二郎らに目を向ける。


「フジコ!おいフジコ」寅二郎が抱えたフジコに声をかける。


「フフ、トラジロウ。来たのね」フジコは笑った。


「おい!ユキナ!」寅二郎が振り返り叫ぶ。

 ユキナがこちらへ走り出す。しかし、


「もう大丈夫。私の“仕事”は終わったの」フジコはそう呟く。


「だから。……あとは任せたわ」そう言って目を閉じた。


「おい!フジコ!目を開けろって!」寅二郎が叫び、


「お願い!《ヒール》!」ユキナが治癒魔法の光を降ろす。


 しかし、フジコの心臓はすでに貫かれ、その身体は冷たくなっていた。

 ――光に包まれても、フジコが目を開けることは無かった。


「!!」寅二郎は歯を食いしばる。ユキナも治癒魔法を解こうとしない。


 ポトリ、とフジコの腕が床に落ちた。


「ふん、朕の“完成された世界”に“未来”は要らぬ。

 ここに立っている以上、貴様らも“異物”。排除しか無いか」


 レギウス三世が言った。


「皇帝!あなた!」アンナたちが身構えその身から光を立ち上らせる。

 寅二郎もフジコをそっと床に寝かせると、立ち上がった。

 その身から白い光を立ち上らせて、


「“完成”?“世界”?」ぐっと目を閉じ、そして目を開く。


「んなこたぁどうでもいいんだよ!」そう叫ぶと、


「てめぇはフジコを殺した!

 だから、――俺はお前を許さねぇ!」


 そして剣を抜き取り、レギウス三世に向ける。

 剣を向けられたレギウス三世は、言い放つ。


「“異物”は排除する。――それだけだ」


寅二郎とレギウス三世、二人の放つ圧がぶつかり、風が吹き抜ける。

魔王無き世界、新世界秩序を巡る決戦が、ついに始まった。

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