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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第十話 決戦はつらいよ①

 寅二郎やアンナたち《勇者PT》は、

 それぞれ皇帝レギウス三世に会うため、《バベルの塔》へと走っていた。


 しかし、アンナたち《暁の翼》の面々は、

 《バベルの塔》目前で足止めを食らっていた。


「どうしました?《光輪の乙女たち》。

 《上下水処理場》の件はどうなりました?」


 レギウス城の城門付近、

 参謀本部将軍ゴールドールに見つかってしまったのだ。


 まさか正直に全てを話すわけにもいかず、

 アンナたちは戸惑っていたが、


「大変なんです!ゴールドール将軍。実は街の中に魔族が!」


 と、ヤスコが慌てた様子で声を上げた。


「何だって!?」ゴールドールに緊張が走る。

「《上下水処理場》からの帰り道、魔族の気配を感じました。

 しかも、今まさに皇帝陛下が《バベルの塔》に視察にいらっしゃると」

 アンナたちもその話に耳を疑い、お互いの顔を見合わせるが、


「それで私たちは、皇帝陛下の護衛を務めんと急ぎ戻りました。

 今もほら、あそこにだって魔族の影が!――」


 そう叫び、ヤスコが指差すと、

 大通りの向こうに、陽炎のように瘴気を吹き出す魔族の姿が。


「何と!」ゴールドールが衝撃の声を上げる。


「ここに来るまでに幾つもあのような気配を感じました!

 ゴールドール将軍!急いで対処を!今すぐに!」


 ヤスコが急かすように、ゴールドールに迫る。

 ゴールドールはじっと深く考え始めた。


“陛下の護衛”と“魔族の排除”、どちらが自分の手柄となるか――。


「分かった!我々がすぐに動こう!

 あなたたちは陛下の護衛に!」


 ゴールドールはそう言って笑顔を見せた。そして、

「行くぞ!“ゴーレム部隊”!」そう言ってアンナたちを見回し、


「陛下には“ゴールドールが魔族を排除。”

 そう伝えるように、くれぐれも頼んだぞ!」


 そう言いながら、行政区の方へ走っていった。


 呆気に取られるアンナたち、しかししばらくして、


「フフ、……アハハハ!」堪えきれない、といった風でヤスコが笑い出した。

 意味も分からず困惑の表情を浮かべるアンナたちに、ヤスコが言った。


「あれは、私が覚えた闇属性魔法、《デコイ》よ。

 ゴールドール将軍は、

 居もしない魔族の影をしばらくは追い続けるわね」


 そう言って笑いすぎで流した涙を拭った。

「まさか、嘘ついたの?」アンナが眉を顰める。


「ええ。結果的にはそうなるかもね。

 でも、“皇帝への道”。私が切り開いたわ。

 ――あとは、アンナ!あなたの仕事よ!」


 ヤスコはまっすぐにアンナを見据えて言った。


 アンナはしばらく自分の握りこぶしを見つめていたが、


「ええ、分かった!行こう、みんな!」そう叫んだ。


 そんなアンナたちの背中に、

「あれ?どうした。こんなところで」

 と、声がかかった。


 アンナたちが振り返ると、それは寅二郎だった。


「トラジロウ!どうしてここに?」アンナが言い、

「俺は皇帝の野郎に用があってな」寅二郎が答える。


 あまりに突然の再会に戸惑う一同だったが、

「これこそ、女神さまのお導き、かもよ?」

 ヤスコが冗談めかして言い、


「そうだね!どちらにしても私たちのやることに変わりは無い!」


そうアンナは言い、一同は顔を向けた。

皇帝レギウス三世がいるという、《バベルの塔》へと――。


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