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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第九話 覚悟はつらいよ③

《バベルの塔》に皇帝がいる!

 トングのもとで情報を掴んだ寅二郎たちは、一心不乱に街を駆けていた。


「レギウス城のその向こう、あそこに《バベルの塔》がある!」

 シドが指を差す、夕日に照らされるレギウス城、その奥を見つめる。

「ああ!ガツンと言ってやらないとな!」

 寅二郎も目を細めながら、シドの指差す先を見ていた。


 リラもそんな二人の様子に目を細めている。


(良かった。二人ともいつも通りに……)


 しかし、行政区の交差点を渡ろうとしたその時、

 寅二郎たちの耳に、物々しい駆け足の音が聞こえてきた。


「あれは!?」シドの顔が一気に蒼白になる。


 見ると、それは“ゴーレム部隊”。

 参謀本部将軍ウインバッハを先頭に、

 ゴーレムたちがこちらへ走って来ていた。


 寅二郎たちも立ち止まり、身構える。


 しかし、“ゴーレム部隊”は角を曲がり別の方へ走っていった。


「何だよ。俺たちが目的じゃないみたいだな」

 寅二郎はそう言って、深く息を吐いた。


 しかし、シドの耳はその声を拾っていた。

「くそ。何で俺様がわざわざドワーフ娘の拘束なぞ……」

 シドはウインバッハの呟きを聞き、汗が噴き出していた。


(あいつら、トングの所へ行くつもりだ……)


 シドは眩暈を覚え、


(言うべきか。トラジロウにこのことを……)


 拳を強く握り、立ち竦む。そんなシドに、


「どうしたの?シド」とリラが声をかけた。その声はか細く震えていた。


 そんなリラの声に、シドはようやくといった様子で振り返る。

 リラの心配そうな顔に微笑むと、寅二郎へと顔を向けた。


「あいつら、トングの所へ行くつもりだ」シドはそう言った。


「何だと!」寅二郎が叫ぶ。


 そして“ゴーレム部隊”の後を追おうと身構えた。


 そこへ。


ドン!


 シドは寅二郎に体当たりをしていた。

 そして吹き飛ぶ寅二郎は「何しやがる! シド!」そう叫んだ。


「お前は先に行け!トラジロウ!」

 シドは輝く球体を掲げ、そう叫んだ。


「それ! お前!」寅二郎が腰に手をやる。

 しかし、そこにあるはずの“アレ”が無かった。

 寅二郎が“希望”と呼んだ、“ゴーレム部隊”への対策機械。


《点火の腕(イグニッションアーム)》が寅二郎の手からシドへと移っていた。


「俺の“覚悟”は見たんだろう?

 だったら今度こそお前の“覚悟”を見せてくれ!」


 夕日を受け、文字列が光る《点火の腕(イグニッションアーム)》。それを掲げシドは寅二郎へ叫ぶ。


「この野郎」寅二郎は立ち上がる。


「本当に。……お前は気に食わねぇ」寅二郎は尻の埃を払う。


 立ち上がった寅二郎はシドを睨み、叫んだ。


「てめえはもう一度ぶん殴る!」


 そして、寅二郎は走り出した!シドとは逆の方。《バベルの塔》へ向かって!


「だから絶対追いつけよ!」そう叫び全力で走っていく。


「待ってるからな!」そう言い残し、寅二郎の背中は小さくなっていった。


 もはやシドは前が見えなくなっていた。溢れる涙で。


 そして《点火の腕(イグニッションアーム)》を胸に抱え、体を震わせると、


「ああ、必ず行く。今度こそ、お前の“隣り”にな」


 そう呟き、シドは走り出した。トングのもとへと。


寅二郎とシド。

《バベルの塔》と“トング”へと二人は真逆の道を走る。

しかし二人の目は同じ先。“希望”に向かって走るのだった。

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