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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第九話 覚悟はつらいよ②

 重苦しい空気のまま辿り着いた《技術交流会館》。寅二郎たちは何も言わず中へと入る。そして寅二郎は受付にトングの居場所を尋ねた。


 そこへやって来たのは、《技術交流会館》で帝国側の代表と呼ばれている男だった。頬がこけ、胃でも悪くしたのか腹を擦りながら寅二郎たちの前に立った。


「私はトング君の秘書でも何でもないのに。

 何でこう何度も、何度も――」 そうぼやきながら、

 寅二郎たちをトングのいる部屋へと案内した。


 そうして、三人はトングのいる部屋へと入った。音楽室のような防音設備の備えられた部屋。女ドワーフのトングはその身を縮こまらせながら座っていたが、


「お帰りなさい!皆さん」トングは笑顔でそう言った。


「よう!元気そうじゃねぇか」寅二郎の顔も綻ぶ。


「ええ!皆さんが顔を見せてくれたということは、

 出来たんですよね? 帝国への対抗策が!」


 トングは立ち上がり、寅二郎のもとへ駆け寄ってきた。


「ああ!そうだよ。

 これが“ゴーレム部隊”への対策機械。

 ――《点火の腕(イグニッションアーム)》だ!」


 寅二郎は嬉しそうに、そう言うと、

 腰につけていた《点火の腕(イグニッションアーム)》をトングに見せつけた。


 トングはそれを受け取り、あれこれ眺める。

「おお、この文字列でああして、こうして……」

 ぶつぶつ呟きながら球を回転させ、光の浮かぶ表面を見つめている。


「こいつがあればゴーレムを止められる!

 イェルクの最高傑作なんだ!」


 寅二郎は我がことのように胸を張り、声を張り上げる。


 そんな二人のやり取りにシドやリラもようやく微笑み、

「お前の手柄じゃないだろ……」シドが呟き、リラが苦笑する。


 トングが《点火の腕(イグニッションアーム)》を寅二郎へ返し、

 寅二郎がそれを腰に結びつけていると、


「そういえば、皆さんに渡す物があるんです」とトングが言った。

「渡す物?」三人が首を捻り、寅二郎が、


「まさか、もっこりチケット?」 


 そう言ってシドに頭を叩かれている間に、


「これです」トングは一枚の紙をシドに渡した。


 シドがそれを読むと、


「これは!“皇帝陛下視察日程表”と書いてあるぞ!」


 と声を上げ、寅二郎に渡すと、

「おいおい!これ、今日のことだろ?

 “バベルの塔視察”!そう書いてある!」

 そう寅二郎も声を上げた。


「赤髪の女の人が、

 “もしトラジロウって人がここに来たら”

 渡しておいて欲しい。そう言って」


(赤髪の女!フジコか!)


 三人はすぐにフジコの顔を思い浮かべた。


(どういうつもりだ? もしや……罠か?)シドは困惑していた。


 しかしシドの困惑など笑い飛ばす勢いで寅二郎は、


「これって、“デートのお誘い”だよな!」そう叫んだ。


(それは絶対に無い)皆の心の声が一つになるが、


「よし!チャンスは逃すな!

 行くぞ!――シド!リラ!」


 と、寅二郎が二人へと顔を向けた。

 その寅二郎の笑顔に、シドは何も言えなくなっていた。

 体が震え出すのを止めようと必死になっていた。

 それでも涙ぐむリラがシドの肩を叩き、「行こうよ」そう呟くと、


「ああ!行くさ!」

 

 シドも満面の笑みで応えた。そして三人は走り出す。

 希望のこもった笑顔で、《バベルの塔》へと。


――しかし、そのすぐ先で、

再び三人が“覚悟”を試されることになるとは知る由も無かった。

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