第八話 勇者PTは立ち上がる④
“施設内で女の子が行方不明”!
《国立上下水処理場》内、激流の立てる轟音を聞きながら、
アンナたちは身を竦ませていた。しかし、
「最後に見たのはどこですか!」アンナが叫んだ。
男へと駆け寄り、男の肩を揺する。
「今ならまだ間に合うかも。早く教えて!」
アンナの勢いに泣き笑いの表情で男が見上げ、
「確か、あのあたりです」
そう言って指を差す。しかし、その先では――
「開いている……?」
「ありえん、ここは常時施錠だ!」
そんな職員の叫び声が聞こえてきた。
「!?」アンナは立ち上がると、
「ゴールドール将軍!今すぐ捜索を!」
ゴールドールに向かい叫んだ。
「“帝国国民証”。あれがあれば居場所が分かるんですよね?
早くゴーレムたちに命じて下さい!早く!」
そう叫び、アンナ、そして《暁の翼》の面々もゴールドールに迫る。
「む!?」しかし、ゴールドールは苦い顔。
ゴーレムたちを見たまま、動こうとしない。
「どうしたんです!?ゴールドール将軍、早く!」
アンナが迫ると、ようやくゴールドールが口を開いた。
「ゴーレムたちが反応しない」
そのセリフにアンナが叫ぶ。
「だから!探すように命令してって――」
アンナの叫びに、
ゴールドールは首を振り、一瞬だけ歯噛みした。
「つまりは“生命反応”がもう無い。そういうことだ」
そしてそう答えると、アンナから目を逸らし、
「その女の子。とやらはどうやら“適正無”。
故にゴーレムたちは動こうとしなかったのだろう……」
ゴールドールのセリフに、
(“適正無”――帝国の定義では、“不要”と同義)
大聖堂で出会った子供たちの姿を思い浮かべ、
ユキナの瞳から涙が零れた。
「この!」アンナは堪らず腰の剣を握っていた。
「アンナ!」アリアやヤスコが必死でアンナに抱きつき、捕まえる。
「そんなことより!」リルルも叫び、
「私たちで探しましょう!」ユキナも叫んだ。
騒然となる場内。
それでも額から汗を滴らせながら、
「では、我々は各国要人の皆さまを護衛し帰るといたしましょう。
こちらには別の者を手配させます。後はご勝手に――」
そう言い残し、ゴールドールたちは帰っていった。
「ごめん。分かった。もう大丈夫だから……放して」
深く息を吐きながら、アンナが言った。
アリアとヤスコは手を放し、《暁の翼》の面々は職員に向き直る。
「ここで落ちたとして、
ここの浄水はこの先、どこへ行くのですか?」
まだ深呼吸を繰り返しているアンナに代わり、ヤスコが尋ねた。
「まだ建設中ということもあり、
今はレギウス城から行政区まで、
浄水の流れる管が敷設されております」
そう言った職員たちが激流の先を見る。
つられて覗き込んだ《暁の翼》たちが息を呑む。
激流の流れる先、そこには巨大なファンが水を送り出していた。
そのファンの回転する様を見て、女の子の両親が崩れ落ちる。
アンナたちも絶望という言葉が頭に浮かび身を硬直させる。
そんなアンナたちの背中に、
「遅くなって済まない」
そう声をかけたのは、参謀本部将軍シルバージルだった。
このシルバージルとの邂逅によって、
アンナの、“皇帝の描く世界”と向き合う決意が固まるのだった――。




