第八話 勇者PTは立ち上がる③
《国立上下水処理場》と看板の立てられた施設。
そこにはアンナたちや要人たちだけでなく、
帝国の一般人の姿もちらほら見受けられた。
さきほどアンナとぶつかった女の子も、
父母と手をつなぎ中へと歩いていく。
「こちらは街中への接続も始まり、
一般の者にも公開しております。
中の光景は、なかなかの迫力で見学会も盛況なのですよ」
ゴールドールが自慢げに声を上げた。
そうして中へ入ると、直線状に広い廊下が奥へと続く。
右側には一面ガラスの張られた水槽のような物。
左側には、アンナの肩まである手すりが設けられている。
その手すりの向こうでは、ものすごい勢いで水が流れていた。
激流のような水の流れる音に負けぬよう、
ゴールドールは声を張り上げる。
「右側の水槽をご覧ください。
ここには下水。汚れた水が集められます。
そして、両側の端には電力によって、
洗浄魔法を常時発する魔鉱石が備えられております」
アンナたちや要人たちがそちらを見ると、
薄汚れた水が溜められており、
確かに巨大な黒いブロック状のものが見えた。
「洗浄魔法を?」「常時発している、だって?」
要人たちが驚きの声を上げる。
「そうして洗浄された水は浄水として、各地へと送られるのです」
ゴールドールが、手すりの向こうへと手をやる。
その背後に、処理場の職員らしき人物が立っていた。
そしてその職員から何やら受け取ったゴールドールが叫ぶ。
「今、職員から洗浄された水を渡されました。
それでは飲んでみたいと思います」
受け取ったグラスを一気に飲み干し、ゴールドールが声を上げる。
「美味い!」
「おお!」「本当にあの汚水が洗浄されたというのか」
要人たちの間に再び驚きの声が響く。
しかし、そんな驚きの声をかき消すように、
「すみません!うちの子を見ませんでしたか?」
泣き出しそうな表情で男が叫ぶ。
その隣にはすでに涙を流す女性の姿。
(まさか!)アンナたちの表情が一気に凍る。
ゴオオオォォーーー!
激流のような水音が響く中、
「ちょっと目を離したすきに。
うちの子がいなくなってしまったんです!」
もはや涙を流し始めた男を見つめ、
ゴオオオォォーーー!
アンナにはその音が処理場の立てる水音なのか、
脳内の最悪が奏でる音か、分からなくなっているのだった。




