第八話 勇者PTは立ち上がる②
帝国の威光を各国に知らしめる“講習会”。アンナたち《暁の翼》は帝国のインフラ施設、《国立発電所》を見学した後も、その異様な光景が頭から離れず、困惑を深めていた。
「まさか、発電所まで開発されていたとは……」
アリアは、その異様な光景を思い出し、身を震わせている。
「あれほどの“ゴーレム部隊”を使う。
どれほどの電力を生み出すのか、想像もつかないね」
ヤスコは深くため息をついた。
「でも、街中に明かりが灯るならそれもいいかもね」
もはや考えるのは疲れた、といった様子でリルルは頭の後ろで手を組む。
「あれほどの異音、とても手放しでは喜べません」
それでもユキナは、納得がいっていないようだった。
(そう、異音。あれほどの電力を生み出す“代償”。
何かを手に入れるなら代償は付き物。でも、
私にはあれが釣り合っているとは思えない。このままでいいの?)
皇帝の思い描く未来、それに思い悩むアンナ。
前を行く要人たちも、口々に昨日の光景を語り合い、
ざわめく一行の間を、風が吹き抜けていく。
「アンナ!」
突然のアリアの声に、アンナが顔を上げた。
するとそこに、女の子がぶつかってきた。
「痛い!」アンナにぶつかり尻もちをつく女の子。
「ごめん!大丈夫?」アンナが女の子を立たせ、
ユキナたちが駆け寄る。すぐに治癒魔法をかけていると、
「大丈夫か?」親だろう男が駆け寄ってくる。
「うん、大丈夫だよ。パパ」
そう言って、女の子は母親らしき女性のもとへ走っていく。
「すみませんでした」アンナが父親に頭を下げる。
「いや、こちらこそ。勇者アンナに失礼を」
父親も恐縮した様子で頭を下げる。
「実はうちの子が適性検査帰りでしてね。
元気が有り余っているんですよ」
そう言って再び頭を下げ、女の子のもとへ歩いていく。
「子供連れの方もいるんだねぇ」
ヤスコは微笑みを見せたが、
「でも、あの子。適性検査帰りだって……」
ユキナは、大聖堂のことを思い下を向く。
「まぁあれだけ元気なんだ。結果も良かったんじゃないか?」
アリアは、嬉しそうに父母と話す女の子を見やった。
「ふふ、そうかもね」リルルやアンナも微笑みを浮かべている。
そして、先頭の集団ではちょうど、
ゴールドールが説明を始めるところだった。
「それでは、本日はこちらの《下水処理場》を見学していただきます」
「何?」「下水処理だって?」諸国の要人たちから不満の声が上がる。
そんな声にゴールドールが不敵な笑みを浮かべる。
「皆様のそんな声も想定済み。
これからそんな皆様の常識を破壊してご覧に入れましょう」
そしてアンナは見上げる。
前世の社会科見学で見た“巨大工場”を思い出させるそれを。
レギオンブルク、帝国の首都を支える巨大インフラ施設。
もはやファンタジーの域を越えた光景に、アンナは息を呑むのだった。




