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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第七話 やっぱり懺悔はつらいよ

 イェルクの《点火の腕》完成もあり、

 その夜は“フォレスト”内で宴会が行われた。


「トラジロウたちの旅立ち、その壮行会だ!

 ほら、お前ら、どんどん飲め!ガハハっ」


 ボルカンの掛け声で、普段は物静かなエルフたちまで楽しそうな歓声を上げている。寅二郎もイェルクの肩を抱きながら、大声で笑っている。


「もう。ボルカンはあんなに嬉しそうに。

 でも、ごめんなさいね。パトラは“ガーデン”に戻っているの」

 国主ミレイアも多少は酔いが回っているのか、ほんのりと頬を染めている。


「パトラ様は何かあったのですか?」

 シドが、ミレイアに酒を注ぎつつ言った。


「いえ、そう心配することではないの。

 “GG14”への対応を徹底させるために少し、ね」

 ミレイアは注がれた酒を転がすように眺め、言った。


「なるほど。下手に騒がず、距離を保たせる。

 やはり、国内では“ゴーレム部隊”への反感が、あると」


 シドが頷き、ミレイアはシドの顔を見つめる。


「獣人たちからすれば、“我らの居場所”を奪うもの。

 ――そう息巻く者も少なからずは、ね」


 ミレイアの言葉に、シドが俯く。


(やはり、

 今はまだ“ゴーレム部隊”と正面からやり合うべきでは無い。

 いくらイェルクの《点火の腕》があるとしても、……だ)


 笑い声の飛び交う会場で、一人俯くシドをリラも心配そうに見つめる。

(シド、やはりあの事を気にしているのね)


 リラの心配はその夜、表面化した。最悪の形で。


「トラジロウ、ちょっといいか?」

 シドが寅二郎に声をかけた。

「ん?どうした、シド」

 顔を真っ赤にした寅二郎は、シドとともに席を立った。

(シド?まさか……)

 リラは二人の背中をずっと見つめていた。


 二人はあてがわれた寝所へ入った。

 シドが先に入り、寅二郎が入ると戸を閉めた。

「何だよ。ずっと黙ったままで」寅二郎が言った。


 シドは振り返り、寅二郎に言った。


「トラジロウ、こちらに戻る前、帝国であったことを覚えているか?」

「ん?何のことだ」

「検問所を抜ける前に騒ぎがあった。

 その時、お前に『覚悟はあるか』と聞いた」

「ん?……確か『この先に進む覚悟』とか何とか」

「そうだ、その“覚悟”。今もあるか?」


 シドが寅二郎を睨む。

 寅二郎の酔いはすっかり冷めている。


「何なんだよ。一体」寅二郎が言う。


 シドは深く呼吸をし、

「あの時、冒険者が“ゴーレム部隊”に捕らえられていた」

 そう言った。


「!?」寅二郎の体が跳ねる。そして、


「それって」と呟いた。


「そうだ。あの時、俺はそれをあえて見せないようにした」

 シドが下を向く。

「おい!」寅二郎がシドの肩を掴む。

 そして、シドを揺すりながら叫ぶ。

「何だよ!それって……」

 シドを睨みつけ、なおも叫ぶ。


「それって、俺が“ゴーレム部隊”との喧嘩に首を突っ込んで、

 しかも、俺が“ゴーレム部隊”に捕まる。そう言ってんのか!」


 シドは肩を揺すられながらも寅二郎を睨む。


「そうだ。お前はあの場で絶対そうする。

 そうなったらお前は奴らに……」


ドゴン!


 寅二郎がシドを殴りつけた。


ドン!――シドは壁に激しく体を打ち付けられた。


「お前!馬鹿にしてんのか!」


 寅二郎はシドを殴った拳を震わせている。


「しかも、冒険者を見殺しにしたってことだろ!

 “ゴーレム部隊”が冒険者を襲ってたんだろ!それを……」


 口から血を流しながら、シドが立ち上がる。


「そうだ。俺はあの冒険者を見殺しにした。

 それでも、俺はトラジロウ。お前を捕まえさせるわけにはいかない」


 シドはふらつく足取りで、寅二郎に歩み寄る。

 拳を震わせたままの寅二郎の前に立つシド。


「イェルクの《点火の腕》、あれは確かに“希望”だ。

 だがな、俺にはお前こそが“希望”なんだ!」

 シドの目から涙が一筋流れる。


「俺はお前を皇帝の前に立たせる。そのためには何だってする。

 何があろうともだ!お前にその覚悟はあるのか!」

 

 シドの涙の訴えに、寅二郎が目を伏せる。


「馬鹿野郎。……馬鹿野郎が……」全身を震わせ言った。


 そして、


ドゴン!


 再び寅二郎は殴った。

 しかし、それは壁だった。


 無言の寅二郎は部屋を出ていく。シドはその場にへたり込んだ。


 部屋の外で、リラは二人の話を聞いていた。

 そのリラの顔を一瞬見た寅二郎だったが、何も言わずどこかへ消えた。


 リラは部屋に入り、シドに寄り添う。

「シド、……」回復魔法をかけようとするリラの手を取り、

「いいんだ。このままで……。

 大丈夫。あいつは、トラジロウは戻ってくるさ」

 そう言って立ち上がった。

「シド……」それでも心配そうなリラに、


「大丈夫。トラジロウは戻ってくる。

 あいつは“勇者”なんだから――」

 シドの顔は晴れやかだった。


 しかしリラは、

(違うの、シド。あなたはそれでいいの?あなたは……)

 そう涙を流し、


寅二郎は朝まで戻っては来なかった――。


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