第六話 反撃はつらいよ③
《点火の腕》の試運転の為、
寅二郎たちは“フォレスト”内の訓練場へとやって来ていた。
“フォレスト”内では珍しい、石壁に囲まれた広い講堂のような訓練場だった。
そして、「おい!あれは」寅二郎が声を上げ、指差す先。
そこには帝国製ゴーレム、“GG14”が一体立っていた。
「対ゴーレムのアイテムを使うのに、
あれが無きゃ、話にならないだろう?」
ボルカンが苦笑いで、“GG14”の傍に歩いていく。
「大丈夫なのか」「いきなり襲ってこない?」
シドやリラは心配そうな声を上げる。
そんな二人にボルカンが言う。
「大丈夫。“大地炉議会”の伝手で一体譲ってもらった。
今は、俺の言うことを聞くように調整されている」
そう言って、ボルカンが“GG14”の肩を抱いてみせた。
「帝国の余裕、ってところか」シドが息を吐き、
「いや、どちらかと言えば“観察”、だな。
こいつらを使って俺たちがどう動くか。
こいつらを使いこなせなきゃ“その程度”。
こいつらを越える物を作り出したら“排除対象”――」
と、ボルカンが“GG14”を睨みつける。
「人族以外の勢力、俺たちで最初の“踏み絵”をさせるつもりさ」
「それって。まずくないの?」リラが息を呑む。
「ま、《点火の腕》次第だな。
それに、お前ら。
どうにかしてくれるんだろ? なぁトラジロウ」
そう言ってボルカンが寅二郎に目を移す。
「ああ、任せろ」寅二郎が答えた。
そして、寅二郎が《点火の腕》の使用方法をイェルクから教わる。
「こいつは持っているだけでいい。
手をかざして念じれば、指令が飛ぶようになっている」
そう言われ、《点火の腕》を腰に紐で吊り下げた。
「そりゃ、親切設計で」寅二郎が笑う。
「技術屋なめんなよ!」イェルクも笑って返す。
「準備は出来たみたいだな。
なら、本番のつもりでいいな?トラジロウ」
ボルカンのセリフに、顔を引き締める寅二郎。
「ああ、こっちも壊すつもりでいいってことだな?」
そう言って、“GG14”と距離を取る。
「ああ、これは“戦闘訓練”という名の壊し合い。
それくらいの覚悟でやってもらおうか」
ボルカンが、そう言って“GG14”に目を向ける。
シドやリラが緊張の面持ちで見守る中、
「行け!“GG14”!目標を排除せよ!」
ボルカンの叫びと共に、“GG14”が動き出す。
直立の姿勢から、腰を落とし口を開く。
「いきなりかよ!」寅二郎が剣に手を添え走り出す。
ビィ!
“GG14”の口から光線が発射される。
寅二郎が横跳びに躱す先、すぐさま二発目の光線が。
「くそ!」寅二郎が転ぶようにそれを躱すが、
ビィ!ビィ!次々放たれる光線、しかも――
「こいつ、俺の動きを狭めに来てる」
“GG14”へ向かう寅二郎の左右の動きを読むように、先読みのごとく迫る光線。それでも徐々に迫る寅二郎が、「ここか!」と剣を振ろうとした瞬間――。
「違う!トラジロウ!誘い込まれているぞ!」シドが叫ぶ。
「!?」寅二郎の正面、“GG14”の口に光が収束――。
(やばい!)寅二郎は左手を咄嗟に突き出し、
「止まれ!」と叫んだ。
ピィ――。口中に光を溜めたまま、“GG14”が停止。勢い余った寅二郎がぶつかり、倒れた“GG14”の口から光線が発射され、天井を貫いた。
「止まった!止まったぞ。成功だ!」イェルクが叫び、
「やったな!イェルク」「おめでとう」シドやリラがイェルクに走り寄る。ボルカンも「よくやった。イェルク」そう言いながら涙を浮かべる。
「おいおい、光線が天井を貫いたぞ。
俺に当たってたらどうするつもりだったんだよ」
寅二郎は一人ぼやく。しかし、その顔は満足そうに笑っていたのだった。




