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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第五話 “新”世界はつらいよ①

 帝国の今を知る――。


 そのために寅二郎たちは帝都レギオンブルク、その検問所に立っていた。“皇帝レギウス三世治世30周年記念式典”に参加しようとする人々が行列を作っている。


「すごい人だな。次から次から列が伸びてるぜ」

 寅二郎がその人々の列を眺め、

「まぁ、人々にとっては“祭り”だからな」

「うん、みんな楽しそうだよ」

 シドやリラも、行列に並ぶ人たちの表情を眺めている。


「次」帝国兵に呼ばれ、寅二郎たちの番が来た。


 寅二郎たちがギルドの会員証を提示すると、

「ふむ。これからはこれを……」兵士はそう言って、カードを差し出してきた。

「“帝国国民証”?」寅二郎がようやくの態で読み上げた。


「おお、トラジロウ。だいぶ読めるようになったじゃないか」

「何だかんだ、勉強してたもんね。トラジロウ」

「はは、そうだろう?俺だってこれくらいはな!」

 そんな寅二郎たちの会話を遮り、

「無くすんじゃないぞ。――では、帝国へようこそ」

 兵士はそう言って、寅二郎たちを送り出した。


「無くすな。か、まぁいいけどよ」

 検問所を抜けた寅二郎が、そのカードを眺めていると、


「おい!“帝国国民証”をどうした!」


 と、怒鳴り声が聞こえた。

 寅二郎たちがそちらを見ると、

 大剣を背中に担いだ、見るからに冒険者が、帝国兵に叱責されていた。


「何だよ。ギルドの会員証なら持っているんだぞ」


 大柄なその冒険者が、反論するが、


「貴様、何度目だ!そこに検問所がある!

 すぐに再発行してもらうんだ!」


 怒鳴りつけた帝国兵の後ろに、ゴーレムたちが並ぶ。

 その視線が冒険者に集まる。

 その無言の圧に屈するように、冒険者が検問所へ歩いていく。


「なんだ?ありゃ」寅二郎が眉を寄せ、

「さぁな、気になるならギルドへ顔を出してみるか」

 シドがそう言い、三人はギルドへと足を向けた。


 軍人が討伐などもこなす。以前から冒険者には肩身の狭い帝国だったが、ギルドの前に立った寅二郎は声を上げた。


「何だ?ギルドの名前が……」


 寅二郎が指差すと、看板には《帝国職業斡旋所》と書かれていた。


 三人で中へと入ると、冒険者と思われる者の姿はまばらだった。

「あの?ギルドはどうなっちゃったんですか?」

 リラが受付の男に尋ねる。すると、


「帝国内では、ギルド制を撤廃する方向で動いております。

 S~D、そんな危険を承知で仕事をこなす。そんな人材を必要としない世界。

 適した者が適した仕事をこなす。そんな世界に動いているのです」


 受付が笑顔で答えた。


「!?」思わず寅二郎は拳を握っていたが、

 シドにその拳を掴まれていた。

 無言で首を振るシドを睨む寅二郎。

「ちょっと。二人とも。……出よう」

 リラが二人を引きずるように、ギルドを後にした。


「ああ、俺が大人げなかったよ。あ~あ」

 そう不満をまき散らしながら、頭の後ろで手を組み歩く寅二郎。


(帝国に入った途端。……これだ。先が思いやられるな)

 シドもため息をつきながら、ボルカンに紹介された、

 帝国とルゼリア、その技術交流の施設、《技術交流会館》へと歩き出した。


そんな三人の足取りはとても重いものだった。


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