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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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【幕間】フジコは裏から世界を見る①

 帝国の女スパイ、フジコ。“ゴーレム部隊”の心臓部、“歩く炉”の奪取など、世界各地のダンジョンで暗躍していた。そんな彼女は今、皇帝レギウス三世の命を受け、帝都レギオンブルクで休養の日々を送っていた。


 道の両脇の建物は直線的で重厚、黒鉄の窓格子は槍のように鋭く、赤茶の煉瓦壁には軍旗や行政紋章が掲げられている。そんな夕闇のレギオンブルクを歩いていたフジコが声を上げた。


「あら、シルバージル将軍?」


 フジコの視線の先には、“ゴーレム部隊”の隊長、ガルディア帝国参謀本部将軍シルバージルの姿があった。見慣れた黒の全身鎧ではなく純白のシャツに、パンツ姿、普段着のそれであった。


「ああ、あの時の、……確かフジコか」

 シルバージルが足を止め、フジコへ振り返る。


「これって運命というのかしら?

 何かお酒でもおごって下さらない?」フジコが微笑む。


「突然だな」

「何よ、こんないい女が誘っているのよ?」

「いい女は、自分からそんなセリフは言わないものだ」

「いいじゃない?おごりなさいよ」

「仕方ないな……」


 シルバージルは、どこかあらぬ方向を見ながら苦笑する。


「どこか、あなたの知っているお店でいいわ。

 エスコートしてくださる?将軍様」


 そうして二人は、街の食堂へと足を向けた。

 夕食時、そして魔王討伐の報が入った最近では、それまで静かだった店内も歓談する声が聞こえてくる。


「それでは、再会に乾杯」

 そう言って二人はグラスを合わせる。


「誘っておいてなんだけど、良かったの?」

 フジコが口元に笑みを浮かべる。

「ああ、ワイバーンの群れを討伐する任務だったのだが、

 思ったより早く終わってね。時間が出来たんだ」

 

 グラスに口をつけるシルバージルだったが、どこか上の空に見える。


 フジコが眉を寄せるのを見て、シルバージルが苦笑する。


「ああ、早く済んだので、

 家に帰ろうと思っていたところだったんだ」

「家?」

「ああ、妻と娘が待っているんだ。

 しかし、思ったより早く済んだことだし構わないだろう」


 そう言って苦笑するシルバージルに、

「悪い男。奥さんや娘さんを置いてこんなところで……」

「君が誘っておいて、ひどいな。

 しかし、彼女たちなら許してくれるさ」

 そして、シルバージルが家族の話を始めた。


 家族の話を笑顔で語るシルバージルの顔を見ながらフジコは思い出していた。


今のフジコの始まり。

“すべてを失った”、小さかったあの頃のことを――。

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