第三話 再起はつらいよ④
寅二郎たちがイェルクの再起に涙していた頃、
ガルディア帝国帝都レギオンブルク、
その謁見の間に皇帝レギウス三世の姿があった。
「“レギウス皇帝陛下即位30周年記念式典”
その招待状、各国へ滞りなく配布開始いたしました」
帝国参謀本部将軍ゴールドールの声に、
レギウス三世は、軽く頷きを返した。
「うむ、ご苦労。
して、“勇者PT”、彼女らの反応はどうか」
「はっ。
“皇帝陛下の統治、その安定した治世の証。
記念式典には万難を排して、臨みたい“
と、快諾を頂いております」
「快諾、か。
朕の“安定した治世”、“勇者”の目に焼き付けてやろう」
そう言って、レギウス三世は天を見上げる。
「“アレ”が完成の暁には、
“帝国の治世”は“世界の治世”となる。
者ども、来るべきその日の為、力を尽くせ」
「はっ!」居並ぶ高官たちが声を上げ、謁見の間を退出していく。
そこに続く、諜報部長官、《調律者》ハルモニアはほくそ笑む。
(くくく、いよいよここまで来たな。
“記念式典”、その日“アレ”を見る要人どもの顔が楽しみだ。
世界の歪みが形を成す、その瞬間の顔が、……な)
そして、ハルモニアは思い描いていた。
レギウス城、その傍で建設されている“アレ”を。
広大な敷地に建設された“アレ”を見る各国要人たち。
その顔に浮かぶ絶望の表情、を。
――そしてルゼリア、“フォレスト”内の謁見の間にて。
「“皇帝陛下即位30周年記念式典”?
魔王討伐祝いの宴会だろ?景気良い話じゃねえか」
寅二郎のセリフに、皆苦笑を浮かべていた。
「馬鹿野郎、そんな訳があるか」
シドにすぐ頭を叩かれ、
「さすがにそれほど簡単な話ではありませんね」
いつも微笑みを絶やさぬミレイアにすら、呆れられていた。
「ふん、トラジロウ。
どうせお前たち、次は帝国だろう?
しっかりと、この場の雰囲気の理由、味わって来い」
そして、隣のイェルクの肩を叩きながら、
「帝国とは“技術交流”ってことで、
帝都内に俺たちの出張所がある、まずはそこを目指せ。
お前たちに力を貸すよう、俺から言っておく」ボルカンが言う。
「助かる」と言った寅二郎は、
ミレイア、パトラ、ファルディーン、そしてボルカンにイェルク。
皆の顔を眺め、シドやリラに顔を向けると、
「行こう」そう言って歩き出した。
シドやリラも後を続く。
その背中を見送る謁見の間に、
“世界樹”から、どこか不安を孕んだざわめきが降り注いでいた。




