第二話 冒険者はつらいよ④
黒雲のようだったワイバーンの群れ、
それは今、やや地表に降りてきているように見えた。
「いよいよ、街を獲物と決めたようだな」
街を背にして、庇うように。
ワイバーンたちを前にノーマンは言った。
老いてなお、その背中には覇気がみなぎる。
「それでノーマン卿、どうする? 方針を決めておきたい」
シドがワイバーンたちを見ながら、声を上げた。
「私が蹴散らしてこよう。漏れた者があらば頼みたい」
当然のようにノーマンが言い、背中の槍を構えた。
「しかし、あの数……」
シドが更に詰め寄ろうとするのを、フランが代わりに答えた。
「お爺さまにお任せください。え、と、失礼……」
「ああ、俺はシド、こちらがリラ、そしてあれがトラジロウだ」
シドが手を向けるのに合わせ、リラが頭を下げ、
「よろしくな!」と寅二郎がサムズアップ。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。
私はフランソワ。フランとお呼びください」
各々自己紹介も終わり、ノーマンが言った。
「では行くぞ」その言葉と共に、ノーマンの槍に雷が走る。
「《ハイジャンプ》!」その声で体が光り、ノーマンは跳躍した。
「何だと!」シドの目の前を砲弾のように飛び出していく。
雷光のように、ワイバーンの群れに突っ込むノーマン。
「《ライトニングランス》!」黒雲を切り裂く雷光。
次々とワイバーンが落ちていく。
「すごい!」リラが声を上げた。しかし、
「あのままではノーマンも落ちてしまうぞ!」シドが叫ぶ。
「まだまだこれからですよ。《エアステップ》!」
フランが手をかざすと、黒雲の頭上へ飛び出るノーマン。
「ふん!」
ピンボールのように、
空中を跳ねまわるノーマンが、
次々と黒雲を切り裂いていく。
「まさか、ノーマンの足場を作っているのか!」
(空中で!しかも動き回るノーマンの動きに合わせて!
この娘も只者ではないぞ!なんという空間把握能力!)
しかし、リラが声を上げた。
「すごいけど。
……あの端の方、漏れだして来てる!」
凄まじい勢いで黒雲を切り裂くノーマンだったが、多勢に無勢。
確かに取りこぼしが出始めていた。
「では、そろそろ私も……」フランが動き出そうとしたが、
「まぁ待てって、フランちゃん。俺に任せろ」
そう言って、寅二郎が走り出す。
そして地面に落ちたワイバーンの死体を引きずりながら叫ぶ。
「おらおら、ワイバーンども、こっちに来やがれ」
「馬鹿野郎、囮になる気か!」シドも慌てて走り出す。
漏れ出たワイバーンたちが叫びを上げ、寅二郎目掛け襲いかかってくる。
「よし!来いや!」寅二郎も剣を抜き、光を纏わせる。
ワイバーンたちが迫り、シドやリラも走ってくるが、
『撃て!』
その声と共に、10本の光が線となり、面となる。
その光は一瞬にして、寅二郎に迫るワイバーンたちを断ち切っていた。
「今度は何だ!」と、シドが立ち止まり、声のした方を向くと、
黒の全身鎧に身を包んだ男と、10体並んで歩いてくるゴーレムたちが見えた。
「遅れてすまない、我々は“GG14”から成る“ゴーレム部隊”。
私は、隊長のガルディア帝国参謀本部将軍シルバージル。
応援要請に応え、今、現着した」
全てのワイバーンが落とされたのだろう、静寂が下りる。
そして、
黒雲が切り払われた戦場、そこに今、
“伝説”“勇者”そして“帝国の力”が並び立ったのだった。




