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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第二話 冒険者はつらいよ③

 静まり返ったギルド内を、

 無人の野を行くが如く歩く《ドラゴン・スレイヤー》、ノーマン。

 ギルドマスターの前に立つと、ようやく口を開いた。


「各地でのドラゴンの生態調査、

 その途中であの黒雲がごときワイバーンどもを見てな。

 こうして足を向けた。今はどうなっておるか」


 迫る危険を微塵も感じさせない物言いに、ギルドマスターは息を呑み、

「奴らはこちらを獲物と狙っている模様です。

 各国に援軍を依頼しておりますが、

 地理的にもすぐには援軍を望めない状況です」

 汗を垂らしながら、ようやく答えた。


「お爺さま!すぐに我らで対処を」


 ノーマンの後ろに控えていた女性が声を上げた。


 ノーマンと同じ拵えの全身鎧。兜を脇に抱えたその女性は、年の頃ならまだ二十歳にも満たない娘のように見えた。輝くような金髪を後ろに束ね、涼し気な目元と、生気に満ちた肌の艶には、神々しさすら感じさせた。


「おお!もっこりナイト!」


 すかさず、シドとリラに取り押さえられた寅二郎の声を無視して、


「フラン……そうだな。

 ギルドマスター、構わんな?」


 ノーマンの声に、ギルドマスターはぶんぶんと首を縦に振る。


「もちろん!これほど心強いことはありません。

 当方としても全面的にバックアップさせていただく!」


 そして、ギルドマスターは顔をギルド内へ向け、


「当ギルドから緊急クエストだ!

 《ドラゴン・スレイヤー》ノーマン卿の後方支援!

 皆、ワイバーンどもをこの街に入れさせるな!」


 そう叫んだ。しかし、


「おいおい、あの数だぞ……」「ノーマン様がいるんだろ?」

 ギルド内の冒険者たちは、ぶつぶつ言うだけで皆見るからに及び腰だった。


「ふむ、今どきの冒険者とは、この程度か」

 特に気を悪くした様子もなく、ノーマンが言う。

「それでは、お爺さま、参りましょうか」

 フランも、特段顔色を変えず言い切った。

 ギルドマスターは苦り切った顔をしていたが、


「待て待て、ちょっと待ってくれ」


 シドやリラの拘束から逃れ、寅二郎が立ち上がった。


「行く行く!俺たちも行くってば」


 寅二郎がずんずん歩いていく。フランのもとへ。


「あああ……」「あの馬鹿」リラやシドは天を仰ぎ、


「フランちゃん!勝ったら褒美はもっこりで頼むぜ!」

 寅二郎が、フランに笑いかけた。


 そして、フランは首を傾げつつ、

「もっこり? ええご助力感謝いたします」

 そう言って、頭を下げた。


「では、行こうか」


 ノーマンは振り返ることも無く、ギルドを抜けた。

 フランの横でルンルン、と音がしそうな歩きぶりで寅二郎が続く。


 シドやリラも苦い顔のまま、歩き出す。


もはや黒雲ではない。

ワイバーンの姿が目視できるほど、それは近づいていた。

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