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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第八章 魔王無き世界編
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第二話 冒険者はつらいよ②

 一夜明け、寅二郎たちはリ・エスティーネ王国の検問所を徒歩で抜けた。

 上手くルゼリア行の乗合馬車を見つけられなかったのだ。


「急ぐ旅でもねえし、たまには歩こうぜ」

 ズタ袋を背中でプラプラ揺らし、寅二郎が歩く。


「いい天気ね」リラも上機嫌で続く。

「ああ、それにすぐ先に大きな街が見えるな」

 シドも、二人に合わせてのんびり歩いていたが、


「おい!あれは何だ!」


 シドの指さす先、街の向こう側に黒い雲のようなものが迫って見えた。

 まだ相当遠いのか、ゆっくりと、しかし確実に街に向かっている。


「急ごう!街が心配だ」

 

 シドが走り出し、リラや寅二郎もついて走る。

 街に入り、出会った人間に場所を聞き出し、ギルドへと急行する。

 ギルドに入ると、大変な騒ぎだった。


「おい!どうなってる?」シドが受付の男に詰め寄ると、


「大量の亜竜、ワイバーンの群れです!

 原因はまだ不明ですが、

 帝国やルゼリアの北方の山々から降りてきた模様。

 帝国のベルンの壁や、世界樹の放つ強大なマナを避け、

 こちらまで南下しているようで……」


――ワイバーン。翼を持つ亜竜。火を吐いたり、風魔法を使いこなしたりして、街や人を襲う。普段は北方の山々で確認される程度で、ここまで南下した例は無い。


(北方の山々で何が?……いやそれより今は!)


 シドは受付に尋ねる。


「それでここまでの状況は?」


「はい、ヴァルニスはもちろん、リ・エスティーネ王国、ルゼリア、そして帝国にも救援要請は出してあります。ですが地理的にどの国でもほぼ中間地点。どこが来てくれるかは……」


 ギルド内が再び騒然となり、

 ギルドマスターらしき人物が走ってきて叫んだ。


「皆さん、援軍が到着するまで対応お願いします!

 街に入るその前に、何とか足止めを……」


 ギルドマスターの叫びにも、場のざわめきは収まらない。

「おいおい!あの数だぞ」「援軍だっていつ来てくれるか」


「到着を待っているわけにも行かないか」

 シドがリラや寅二郎と頷きあっていると、ギルドの扉が開いた。


「やれやれ。今どきの冒険者は……」


 取り立てて大きな声では無かった。

 しかし、低く響く声。

 その声を聞いたものから沈黙が伝播し、ギルド内が静まり返る。


 その全身鎧の侵入者を見たギルドマスターが叫ぶ。


「あ、あなたは!」


 傷だらけの全身鎧、兜を脇に抱え、背中に槍が見える。

 年を重ね、かつては金色だっただろう髪も、白くなり始めている。

 深く顔に刻まれた皺が、もはや老齢の域であることを物語る。

 それでも立ち姿は凛として、纏う覇気は本物だった。


「“ドラゴン・スレイヤー”、ノーマン・カタストロフ卿!」


畏敬の念を込めたギルドマスターの声が、ギルド内に広がるのだった。

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