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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
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第五話 リ・エスティーネ王国はつらいよ②

 カルナードで緊急帰国の要請を受けたアンナたち《暁の翼》一行は、馬車を乗り継ぎまさに夜を徹して走り続けた。王都エスティア、その王宮へと辿り着いたアンナたちは馬車を降りた途端に、謁見の間へと走る。エルザたち王国騎士団第三隊も後に続く。


 謁見の間の扉を自ら開くと、アンナは叫ぶ。

「《暁の翼》、只今戻りました!

 王よ、一体何が起こったというのです」

 最早儀礼などお構いなしで、アンナたちは王のもとへと走り寄る。


 レオニス四世もその姿を見るや、玉座を立ち上がり声を上げる。

「よくぞ戻ってくれた!“勇者”カミシロ・アンナよ」

 王の表情を確認したアンナは、そこでようやく跪く。


「大至急の帰国要請、しかも内容は不明。

 取るものもとりあえず、急ぎ戻りました。

 王よ、一体何が……」


《暁の翼》、そしてエルザたち王国騎士団の面々も跪く。


「魔王ノクスの狙いが見えた。闇魔法、《リバース》、

 世界規模での“スタンビート”、それらもすべて前座よ……」


 レオニス四世は玉座から踏み出すと、アンナたちの横を通り過ぎる。


「!?」国王自ら、どこかへと導こうというのか。


 その国王の行動に、アンナ以下これまでにない異常を感じ息を呑む。


「ついて参れ」その言葉を絞り出した後、レオニス四世は黙って歩き続ける。


 アンナたちは、自分たちの早鐘のように打つ鼓動を聞きながら後を続いた。


 そして、国王が立ち止まったのは――。


「ここは!」アンナが声を上げた。


 そこは、“始まりの場所”。アンナたちが召喚された“英雄召喚”の祭壇。

 ローマ風の柱が並ぶ神殿のような場所で、

 床にはかすかに光る魔法陣が浮かんでいた。

 ガラスを擦り合わせたような、鎖の擦れる音だけが耳に障る。


 魔法陣の前に祈りを捧げる人物が見える。


「聖母マリア様!?」皆が声を上げる。


 しかし、迂闊に動くのは憚られた。


 なぜなら聖母マリアには、


 ただただ祈りを捧げているように見える彼女には、


 何か黒く光る鎖のようなものが四方から絡みついていたのだ。


「王よ!」アンナの叫びにレオニス四世は頷く。


「おそらくあれが魔王ノクスの切り札。

 《リバース》どころか、

 聖ローマン教、女神の思想ごと闇に落とそうとしておるのだ」


 レオニス四世の言葉に、

 アンナ以下すべての者が、雷に打たれたように体を硬直させた。


沈黙する彼女らの耳には、鎖の擦れる音だけが聞こえるのだった。

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