第四話 ガルディア帝国はつらいよ?③
ボン、ボボン――。
《鉱物の積層》、そのコアの間に閃光と爆音が響く。
フジコの投げた炸裂弾や発光弾。
しかし鬼に槍の一閃でかき消されてしまう。
「くだらん!くらえ」
すかさず鬼の槍が繰り出され、寸前のところで顔を捻るフジコ。
頬を霞め、血が滲む。それでも後転し、距離を取る。
そこへ迫るのは火球。フクロウ男の魔法だった。
「!?」フジコは再び炸裂弾を火球へ投げる。
激しい爆発とともに、爆風で壁へと吹き飛ばされた。
ドン。壁に背を打ち付け血を吐くフジコ。そこへ大型のトカゲの突進。トカゲの額に短剣を突き刺しながら体当たりを飛んで躱した。しかし抵抗はそこまでだった。
「空中では避けられまい」鬼が槍を振るい、フジコは叩き落された。
「ぐう」地面に叩きつけられ、それでも尚後転して距離を取る。
しかし、鬼は距離を詰めていた。
いよいよフジコの正面で槍を振りかぶった。
「死ねぃ」その声にさすがのフジコも死を覚悟した。
(こんなところで死ぬわけには……)
その瞬間――、
『撃て!』その声と共にコアの間に光線が走る。
鬼も、フクロウ男も、生まれ出た魔物たちも残さず貫かれていた。
「ハァ、ハァ…」
フジコは両手を床につき、激しく息を吐き出していた。
そんなフジコに歩み寄ってきたのは、黒色の全身鎧。
「まさか、人間か。
私は帝国軍参謀本部所属の将軍、シルバージル。
――あなたは?」
ようやく立ち上がったフジコは、シルバージルとその背後に並ぶ“ゴーレム部隊”を見回しながら言った。
「私はフジコ。助かったわ、ありがとう、シルバージル将軍」
シルバージル将軍は、盛大に眉を顰め言った。
「女性一人で、こんなところで何をしていた?」
フジコは、舞台女優のような大きな身振り手ぶりでコアの間を歩き出す。
「ふふ、私は冒険者なの。遺跡発掘専門のね。
今回の世界規模での“スタンビート”。
こんな状況、調べないわけにはいかないでしょ?」
あちらこちらと歩き回り、振り返ると、
後ろに手を組み、シルバージルにウインクすら見せた。
「そんな理由で?こんな危険なダンジョンに。
にわかには信じられんな。本気で言っているのか」
まっすぐにフジコを捉える、シルバージルの視線。
「本気よ?ダンジョンに眠るお宝。最高のロマンじゃない?」
しばらく視線を交わしたままの二人だったが、
「分かったわよ。こんな危険な真似、二度としないわ」
フジコは両手を上げ、シルバージルに微笑んだ。
「ああ、そうしてくれ。あなたも帝国の守るべき民。
皇帝陛下の恩情を受けるべき国民の一人なのだから……」
シルバージルの言葉に、フジコは思わず笑いだしていた。
「私が?帝国の民。皇帝陛下の恩情を受ける?」
腹を抱える勢いで笑うフジコに、シルバージルは眉を顰め叫ぶ。
「何がおかしい!帝国は民を守る!少なくとも私はそうしている!」
ようやく笑いを収めたフジコは言った。
「ええ、“あなた”はそうなのね。悪かったわ」
そうしてフジコは歩き出した。
「シルバージル将軍、今回は本当に助かったわ。
ありがとう。またいつか会えるといいわね」
フジコの背中を見つめ続けたシルバージル将軍は見逃していた。
フジコの手に光るものを。
コアの奥、七色に輝いていたはずの場所が、くり抜かれていたことを――。




