第三話 カルナードはつらいよ⑤
リッチを退け、コアの間を掌握することに成功した。
それでも未だ傷の治療のために、多くの兵が動けずにいた。
そんな中、アンナたちは近づいてくる足音に身構えていた。
しかし、
「おお、こちらも終わったようですな」
身構えるアンナたちに聞こえてきたのは、飄々とした声。
黒塗りの全身鎧に身を包んだ男が、こちらへと歩いてきていた。
「おっと、私たちは帝国の者です。
私は帝国参謀本部将軍、ライクイーグル。
そしてこちらが……」
アンナたちの困惑を、気にも留めず、ライクイーグルが言った。
「帝国の誇る“GG13”で構成された“ゴーレム部隊”です」
ライクイーグルの後ろには、二列で行進するゴーレムたちが続いた。
アンナたちはようやく構えを解いたが、アリアが言った。
「そちらからやって来たということは、
《大空洞》を抜けてきたのか?」
アリアの言葉にライクイーグルが頷く。
そして、アンナに顔を向け言った。
「ああ、《大空洞》は制圧した。
コアの警戒に二体残し、
残りでこちらも、と向かってきたのだ」
どこか挑発的な物言いに、アンナは眉をひそめたが、
「そりゃぁ、ありがたいこって」
と、場の空気を読まずに、ガガンが声を上げた。
「ふむ、こちらは?」
相変わらずライクイーグルは、アンナを見たままだ。
「はい、こちらは“奴隷兵団”の……」
アンナの言葉を最後まで聞かず、ライクイーグルが声を上げる。
「なるほど、なるほど。“奴隷”ですか。
それはご苦労だったね。しかしこれからは……」
ライクイーグルは、アンナからカルナード兵団へと目を移し、
「我々に任せたまえ! 我々“ゴーレム部隊”に、ね」
そのライクイーグルの言葉に、《暁の翼》の面々の目の色が変わる。
しかし、アンナは手で制し、苦笑いを浮かべ言った。
「頼もしい限りです。ライクイーグル将軍。
これからも“共に”力を合わせて参りましょう」
ライクイーグルは一瞬目を丸くしたが、苦笑いを浮かべ、
「そうでしたな。“共に”参りましょうな、“勇者”殿」
兵たちの治療も終わり、アンナたちは“オアス・ラジェム”の王宮へと帰ることにした。コアの警戒は、ライクイーグルの「お任せください」との言葉に、任せることにした。
帰りの馬車の中、ヤスコが尋ねる。
「アンナ、よかったの?“ゴーレム部隊”に任せてしまって」
アンナは、窓から見える砂漠を眺めながら答えた。
「悔しいけど、私たちも万全じゃない。
一番力を残していたのは、“ゴーレム部隊”よ」
アンナの言葉に、《暁の翼》の面々の表情が曇る。
誰も声を上げられず、沈黙が広がる。
(“ゴーレム部隊”の力は本物だった。
だけど全てを任せてしまっていいの?)
変わらず続く砂漠の風景を見ながら、アンナは考える。
(私たちは希望の象徴を目指している。
だけどそれは“ゴーレム部隊”になるという事?……分からない)
王宮へ到着するまで、アンナの胸から疑問が消えることはなかった。




