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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
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第三話 カルナードはつらいよ③

 盾を構えるアリアを先頭にアンナたち《暁の翼》が侵入を開始した。

《悠久の王墓》、その地下へと通じる廊下には、冷たい風が吹き抜ける。


 しばらく進んだところで、アリアが立ち止まり、手を上げた。


「いよいよだ」その言葉で皆気合を入れなおし、広間へと出た。


 見ると、カルナード兵らしき集団。

 その向こうに夥しい魔物。

 骸骨兵などのアンデッドたちが、

 カルナード兵たちに群がっている。


「急ごう!」アンナたちが走り出す。


「はああああっ」アンナの剣に光が巻き付いていく。


 その輝く剣を一閃すると、骸骨兵をまとめて斬り飛ばす。


「おお!すげぇ!」

「一撃かよ!」


 カルナード兵たちに歓声が上がり、

 その前に《暁の翼》たちが陣取った。


「お待たせ!」剣を構えつつアンナが声をかける。


 カルナード兵に安堵の表情が浮かぶ。


 しかし、


「遅えぞ!何してたんだ!」


 軽鎧の禿頭男が叫んだ。


「!?」アリアがその声に一歩出ようとするが、アンナが手で制す。


「“勇者”なんだろ?お前は!」

 なおも声を上げる男にアンナが言った。


「すみませんでした。……ですがあなたは?」


 男が一歩前に出る。

 そして、胸を張り声を張り上げる。


「俺はガガン。“奴隷兵団”、ここの隊長だ!」


“奴隷”、その言葉にアンナの呼吸が止まる。


(カルナードの奴隷制度は凍結されたはずなのに――)


 アンナが考え込んでいると、


「まぁいい。とにかく今はあいつを何とかしてくれ」


 ガガンと名乗った男が指差した先を、

 アンナはようやく振り返った。


 今も押し寄せるアンデッドたちの奥、コアが見える。

 そのコアからは悍ましい触手が四方へ伸び、

 その横には魔王軍らしき魔族二人。

 そして魔族の後ろには、襤褸布を纏った骸骨。頭には冠。

 魔王軍二人の纏うそれよりどす黒い“瘴気”。


「まさか、リッチか!」エルザが叫ぶ。


――リッチ。死して尚魔法の深淵を求めるという存在。高位の魔法を使いこなす、知性ある死人だ。


 瘴気を立ち上らせる魔族が一人、ほくそ笑む。

「遅かったな。おかげでこれほどの魔物が生まれたぞ」


 魔族の隣で、冠を被った骸骨、リッチがゆっくりと顔を上げた。


「ふん、私を魔物呼ばわりとはな。

 しかし“勇者”か。

 面白い、私の魔法の実験台となってもらおうか」

 そう言ってリッチが詠唱を始めた。


「黒き太陽の下、何人生き残るかな……

 影よ、死よ、行き場を失い、名も奪われた力よ。

 主なき魔力、捨てられし願い、世界に拒まれたすべての残滓よ――」


 リッチの詠唱と同時に、

 周りのアンデッドたちからも瘴気が立ち上る。


 エルザが堪らず叫ぶ。


「まずいわ!おそらくあれは闇属性最上位、《ブラック・サン》!」


 アンナたちは、その異様な光景に息を呑む。

 彼らの立ち上る瘴気が交わり、頭上に黒く輝く球体が生まれる。


 その目の前でエルザが骸骨兵を蹴散らし、騎士団の陣形を変化させた。


「アンナ!私たちが道を開く!

 とにかくリッチを止めてくれ!」


 エルザの叫びで王国騎士団が、魚鱗の陣で走り出した。

 その姿に、アンナは一度自身の頬を張った。迷いを振り払うように。


 そして、


「行くよ!」と叫び後に続く。アリアとヤスコも続き、

 その体には、ユキナの加護の光が降りてくる。


「《ライトニングアロー》!」リルルは雷を放った。

 しかし、その雷は魔王軍の盾に逸らされる。


「光を持たずして光を喰らい、

 熱を放たずして熱を奪い、

 命を生まずして命を質量へと変える。


 それは天体にあらず、されど天体の皮を被りしもの――」


 朗々と、謳い上げるようなリッチの詠唱。


 先頭で骸骨兵を切り飛ばすエルザが叫ぶ。


「詠唱を止めさせるんだ!」


 それでもリッチの詠唱は続いていく。


「――世界の理に反し、

 正しき循環を否定する

 反転せし太陽の法則よ――」


走るアンナの胸が、嫌な予感に締め付けられる。

リッチの詠唱が続く中、アンナたちの決死の突撃が敢行された!

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