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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
228/293

第二話 ヴァルニスはつらいよ④

――謁見の間、

 その奥に赤黒く明滅するコアが見える。

 そしてコアから伸びる触手。

 その傍らに魔王軍だろう二人。

 その身に瘴気を纏わせ薄ら笑いを浮かべている。

 そして――。


 二人の倍ほどの大きな獅子。

 しかしその獅子の顔の横には、羊の頭と亜竜の頭。

 伝説上の魔物、合成魔獣、キマイラだ。


「ほほう、ボスらしい魔獣がお出ましですな」

 余裕を崩さないウインバッハ。


「先の作戦通り、我らがキマイラを押さえます。

 老師たちは魔王軍をお願いします」


 ウインバッハの言葉に「おう」とトンペティが応えた。


 そして隙を伺うように動き出すトンペティを確認し、


「行け、GG13!キマイラを制圧せよ」


 ウインバッハの号令に“ゴーレム部隊”が動き出した。


“ゴーレム部隊”が迫ると、キマイラの羊頭が詠唱を始めた。

 うっすらと風の膜を身に纏ったのだ。

 そして、キマイラは一気に跳躍。

 ゴーレム部隊にその爪を振り下ろす。


 ゴーレムたちが躱し、残りが光線を発射。

 しかし膜に逸らされる。


「囲い込め!動きを封じるのだ!」

 ウインバッハの号令に、“ゴーレム部隊”の陣形が変わる。


 網を絞るように、陣を動かす“ゴーレム部隊”。

 それを嫌ったのか、キマイラがバックステップ、亜竜の頭が口を開く。


「何だ?」


 亜竜の口から巨大な炎の渦が吐き出された。

 ゴーレムたちの後ろ、その司令官ウインバッハに向けて!


「うわああああ!」ウインバッハがその迫力にへたり込む。


 しかし、ウインバッハにその炎は届かない。


 ゴーレムたちが壁となり、

 その身を焦がしながら立っていたのだ。

 一体がプシューと音を吐き、その場に膝をつく。


 その身に走る魔法陣めいた文様が、淡く明滅を繰り返す。


 腰を下ろしたままのウインバッハが、震える声を上げる。


「よくやった!今だ、キマイラを抑え込め」


 その声に残りのゴーレムたちがキマイラに殺到、封じ込めに成功していた。


「上出来じゃな」トンペティの声に、ウインバッハが振り返った。


 見ると、コアの傍に立っていた魔王軍、

 二人の胸にぽっかりと穴が空いて、絶命している。


「これで終いじゃ」


 トンペティの光渦巻く拳が、

 ゴーレムたちに抑え込まれたキマイラ、

 その三つの頭をまとめて叩き潰した。


 ゴーレムたちが補給に入り、ダンジョン内に振動音が響く。

 トンペティが、焼け焦げながらも立ち続けたゴーレムに目をやり言った。


「後は、コアの制御に人を呼ばねばならんな」


 トンペティの言葉にウインバッハが駆け寄り、自分の胸を叩き言う。


「それではその間は我らがコアの見張りとなりましょう。

 ……帝国としても、実地の経過観測が必要ですのでね」


 振動音に顔を顰めながらトンペティ。

(“これ”に不安を感じんとはな。……しかし)

 屈託なく笑顔を見せるウインバッハに、苦笑いを返し、


「では、すぐにでも人を使わせよう。それまで頼む」

 そう言って、トンペティたちは《断崖の古城》を後にした。


(魔王討伐もまだ見えん。この不安、いつまで続く事やら)


トンペティは胸にモヤモヤを抱えたまま、歩き続けるのだった。

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