第二話 ヴァルニスはつらいよ④
――謁見の間、
その奥に赤黒く明滅するコアが見える。
そしてコアから伸びる触手。
その傍らに魔王軍だろう二人。
その身に瘴気を纏わせ薄ら笑いを浮かべている。
そして――。
二人の倍ほどの大きな獅子。
しかしその獅子の顔の横には、羊の頭と亜竜の頭。
伝説上の魔物、合成魔獣、キマイラだ。
「ほほう、ボスらしい魔獣がお出ましですな」
余裕を崩さないウインバッハ。
「先の作戦通り、我らがキマイラを押さえます。
老師たちは魔王軍をお願いします」
ウインバッハの言葉に「おう」とトンペティが応えた。
そして隙を伺うように動き出すトンペティを確認し、
「行け、GG13!キマイラを制圧せよ」
ウインバッハの号令に“ゴーレム部隊”が動き出した。
“ゴーレム部隊”が迫ると、キマイラの羊頭が詠唱を始めた。
うっすらと風の膜を身に纏ったのだ。
そして、キマイラは一気に跳躍。
ゴーレム部隊にその爪を振り下ろす。
ゴーレムたちが躱し、残りが光線を発射。
しかし膜に逸らされる。
「囲い込め!動きを封じるのだ!」
ウインバッハの号令に、“ゴーレム部隊”の陣形が変わる。
網を絞るように、陣を動かす“ゴーレム部隊”。
それを嫌ったのか、キマイラがバックステップ、亜竜の頭が口を開く。
「何だ?」
亜竜の口から巨大な炎の渦が吐き出された。
ゴーレムたちの後ろ、その司令官ウインバッハに向けて!
「うわああああ!」ウインバッハがその迫力にへたり込む。
しかし、ウインバッハにその炎は届かない。
ゴーレムたちが壁となり、
その身を焦がしながら立っていたのだ。
一体がプシューと音を吐き、その場に膝をつく。
その身に走る魔法陣めいた文様が、淡く明滅を繰り返す。
腰を下ろしたままのウインバッハが、震える声を上げる。
「よくやった!今だ、キマイラを抑え込め」
その声に残りのゴーレムたちがキマイラに殺到、封じ込めに成功していた。
「上出来じゃな」トンペティの声に、ウインバッハが振り返った。
見ると、コアの傍に立っていた魔王軍、
二人の胸にぽっかりと穴が空いて、絶命している。
「これで終いじゃ」
トンペティの光渦巻く拳が、
ゴーレムたちに抑え込まれたキマイラ、
その三つの頭をまとめて叩き潰した。
ゴーレムたちが補給に入り、ダンジョン内に振動音が響く。
トンペティが、焼け焦げながらも立ち続けたゴーレムに目をやり言った。
「後は、コアの制御に人を呼ばねばならんな」
トンペティの言葉にウインバッハが駆け寄り、自分の胸を叩き言う。
「それではその間は我らがコアの見張りとなりましょう。
……帝国としても、実地の経過観測が必要ですのでね」
振動音に顔を顰めながらトンペティ。
(“これ”に不安を感じんとはな。……しかし)
屈託なく笑顔を見せるウインバッハに、苦笑いを返し、
「では、すぐにでも人を使わせよう。それまで頼む」
そう言って、トンペティたちは《断崖の古城》を後にした。
(魔王討伐もまだ見えん。この不安、いつまで続く事やら)
トンペティは胸にモヤモヤを抱えたまま、歩き続けるのだった。




