第二話 ヴァルニスはつらいよ①
魔王軍による世界規模の“スタンビート”。
《青環の神殿》を鎮圧した武聖トンペティたちも、息つく暇が無かった。
すぐさま次のダンジョンへと赴き、鎮圧して帰ったのだ。
国主マルセロへと報告に出向いたトンペティは、謁見の間にいた。
「老師、帰ったばかりの所、悪いが次は《断崖の古城》へ頼む」
国主マルセロの顔にも疲労が滲んでいる。
「了解した。
しかしマルセロ、お主休めておるのか?
顔色が優れんようだが……」
眉を顰めるトンペティの背中から、次の伝令が駆け込んでくる。
「伝令!《鉱脈迷宮》に帝国の“ゴーレム部隊”が入りました」
マルセロはそちらに顔を向け、
「分かった。すぐに回せる冒険者を回せ!
“ゴーレム部隊”の援助に向かわせろ」
伝令が頷き、謁見の間を走り去る。
ようやくの体で、マルセロがゆっくりと息を吐く。
「まさか、これほどの事態となるとはな。
正直、眠る時間はとれてはいない。
しかし、乗り切らねばならん。――ここが正念場だ」
マルセロの視線には、まだ力がこもっていた。
そのマルセロの表情にトンペティが息を吐く。
「無理はするなよ。
お前はヴァルニスの国主、代わりなどおらん。
それだけは忘れるな。……しかし」
トンペティは再び眉を顰め、言った。
「“ゴーレム部隊”とは?帝国と聞こえたが」
マルセロは玉座へと座り、手を広げた。
「ああ、帝国皇帝レギウス三世から送られた援軍だ。
疲れ知らずの“ダンジョン攻略兵器”。
正直思うところもあるが、大いに助けられているよ」
沈黙するトンペティに、マルセロが重ねて言った。
「《断崖の古城》には奴らも向かっている。
老師、その目で奴らを見極めて欲しい」
マルセロの言葉に頷いたトンペティは、踵を返した。
「では、行って来よう」
そう言ってトンペティは歩き出す。
《断崖の古城》へと。
“スタンビート”鎮圧よりも、
むしろ“ゴーレム部隊”へと思いを巡らせながら――。




