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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
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第一話 ルゼリアはつらいよ⑪

 寅二郎は再び、世界樹の前に立っていた。


 一度強い風が吹き抜けた。

 世界樹から騒めく音が降り注ぐ。


「マナの流れの先を見極める。

 きっとその先には魔王がいる」


 シドやリラが息を呑む。

 その音が聞こえる程の静寂の中、

 寅二郎が世界樹に触れた。


 寅二郎の中に流れのイメージが入り込んでくる。

 ゴウゴウとうるさい程に流れ込む。

 寅二郎の体が小刻みに震え出した。


 その様子にシドとリラが声を上げる。

「おい!」「大丈夫?トラジロウ」

 すぐに寅二郎が世界樹から手を離した。


 寅二郎の顔が困惑している。


 震える手を眺め、視線をファルディーンに移した。


「分からねぇ、見えねぇんだ!ファルディーン!」


 寅二郎の姿にすっと目を細め、ファルディーンが言った。


「違う、トラジロウ。何を焦っている?

 “見たいものを探す”のではない。

 深く潜り、ただ“見えるものを見る”のだ」


 ファルディーンの言葉に、寅二郎の胸が一つ跳ねる。


 さらさらと冷たい風が吹き抜けた。


 そして寅二郎は、ゆっくりと深呼吸を入れた。


「もう一度だ」寅二郎が呟き、世界樹へと向き直る。


 そっと世界樹に手を触れる。

 ゴウゴウと鳴る流れの中に寅二郎は立っていた。


(深く、流れに身を任せる)


 徐々に寅二郎の体が引き寄せられるように感じられた。次第にそれは流れに溶け込み始め、(これは…)寅二郎の頭に風景が流れ込んでくる。(懐かしいような…)どこかの王城が見え、祭壇の様な場所が見えた。(あれは!)マナが吸い込まれ渦を巻く黒い場所。


 寅二郎は目を見開くと叫んだ。


「“英雄召喚”の神殿!魔王はその奥にいる!」


「“英雄召喚”の神殿!リ・エスティーネ王国か!」

「見えたのね!トラジロウ」

 シドやリラが叫びながら、寅二郎に駆け寄る。


 寅二郎は振り返ると微笑みを浮かべ、ファルディーンに言った。


「ありがとう、ファルディーン。おかげでようやく、見えたよ」


 ファルディーンは首を振り、言った。


「礼には及ばん。それに笑っている場合では無いぞ?

 これからが本番、魔王ノクスとの決戦なのだからな」


 寅二郎はファルディーンに頷き、

「シド、リラ、行くぞ!」と走り出した。


 その背中を見送り、ファルディーンが呟く。


「頼んだぞ、トラジロウ。

 お前のその“勇者”の在り方で、魔王の野望を打ち砕け」


再び強い風が吹き、世界樹が騒めきを鳴らすのだった。

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