第一話 ルゼリアはつらいよ⑩
ファルディーンが“フォレスト”内の謁見の間に入ると、
国主ミレイア、ボルカン、そして寅二郎たちの姿があった。
「戻りましたか、ファルディーン卿」
ミレイアが安心したのか、一つ息を吐く。
「ええ、“ゴーレム部隊”と共闘し、《穿山古神殿》鎮圧に成功しました」
ファルディーンの報告に、ボルカンが言った。
「それよ、ファルディーン。“ゴーレム部隊”、どう見た?」
ファルディーンは《穿山古神殿》での出来事を報告する――。
自己補給するゴーレム、将軍の指示に即応する動き。
「とても効率的に動く。“ゴーレム部隊”は使える……」
言葉を濁したファルディーンにボルカンが先を促す。
「どうした?まだ何かあるのか」
しばし考え込む姿勢を見せたが、
ファルディーンは顔を上げた。
「やつらが補給をする際、神殿が揺れた。
おそらくダンジョン内のマナを直接吸い出しておる。
それで神殿が揺れた。儂には泣いておるように聞こえた」
ファルディーンのその言葉に、寅二郎は考えていた。
(それは!イェルクが《機工の迷宮》で作ろうとしていた“動く炉”。
帝国のスパイ、フジコに奪われた技術じゃねぇか)
寅二郎の胸の内が、騒めいている。
(しかも使い方がイェルクが想定していたものと違う)
寅二郎は居ても立っても居られない気持ちになっていた。
イェルクの顔が脳裏をよぎる。
しかし、そのイェルクの表情が読み取れない。
寅二郎の胸の騒めきはおさまらない。が、
「しかし“ゴーレム部隊”のおかげでダンジョンを鎮圧出来ました。
帝国の協力に感謝すべき場面でしょう。……今は」
と、眉を顰めるミレイアが、寅二郎に向き直った。
「今はトラジロウ、
あなたの話を進めましょう。
世界樹へと向かいなさい。
マナの異常な流れ、その先を見極めるのです」
ミレイアの言葉にその場の皆が頷き、
寅二郎たちが歩き出した。
「ファルディーン卿、あなたも世界樹へ。
トラジロウの力となってあげてください」
ファルディーンもその言葉に頷き、寅二郎の後を歩き出す。
そうして寅二郎は、再び世界樹と相対することになった。
謁見の間には、世界樹の葉がこすれ騒めくような音が聞こえてきていた。




