第一話 ルゼリアはつらいよ⑨
《穿山古神殿》、
コアの間での“ゴーレム部隊”の奮闘。しかし敵も去る者。オーガが抑える間にコア近辺から続々と魔獣が生れ落ちる。
一進一退の攻防に、ファルディーンが指示を出す。
「儂に魔力を集中せよ。辺り一面焼き尽くす」
「は!」ファルディーンの詠唱に合わせ、エルフたちが意識を集中する。
それを見ながら帝国将軍クロロノートが笑みを浮かべる。
「ありがたい。決着は早い方が良いですからな」
そのクロロノートのセリフが耳に障る。
ファルディーンの視線の奥に、一体のゴーレムが映る。
オーガの一撃を受け、
吹き飛んだソレは、神殿の壁に背を預ける。
すると、全身の文様が光り始めた。
(あれは!ダンジョンからエネルギーを補給しておるのか!)
そしてそれに呼応するように、辺りが振動を始めた。
(これは!?)
異様な光景に、ファルディーンの集中が途切れそうになる。
「ファルディーン卿!」エルフ兵の叫びに、オーガが気づく。
「あそこだ!魔法を打たせるな!」
オーガがゴーレムたちを弾き飛ばし、魔獣がファルディーンに迫る。
しかし、クロロノートが指示を出す。
「壁となれ!」
その言葉と共に“ゴーレム部隊”がファルディーンの前に立つ。
押し寄せる魔獣をまさに壁となり、抑え込む。
「《プロミネンスフレア》!」
ついにファルディーンの詠唱が決まり、
巨大な太陽がコア周辺を焼き尽くす。
辺りに焼け焦げた匂いが立ち込める。
かろうじてコアだけがそこにあった。
「手間をかけたな」ファルディーンのセリフに、
「いえ、お見事でした。さすがはファルディーン卿。
“魔術部隊”総督の力、堪能させていただきました」
クロロノートが手を打って微笑む。
しかし、そのクロロノートの微笑みにファルディーンが眉を顰める。
(何か、どこか癪に障る。それに“ゴーレム部隊”……)
ファルディーンが目を向けるそこでは、
“ゴーレム部隊”が皆エネルギー補給を始めていた。
それに合わせ《穿山古神殿》全体が振動しているように感じる。
その振動に不安げな表情を浮かべていたファルディーンたち。
しばらくしてようやく振動がおさまると――、
「ふむ、補給が済んだようです。我々はこれにて」
そう言い残し、クロロノートと“ゴーレム部隊”が引き上げていった。
コアの調整に当たるエルフ兵たちを見て、
ファルディーンが息をつく。
そして、ふいに天井を見上げた。
(ん?あれは、コアの周りに何かが渦を巻いている。天井画か?)
その天井画は、コアへと向かうのかコアから出ているのか、それすらわからない。何かが渦を巻く紋様の様でもあった。
(ダンジョン内は学者共が調べたはず。
《プロミネンスフレア》で姿を現したのか?分からん)
奇妙な天井画に見入っていたファルディーンだったが、
「ファルディーン卿、コアの制御が終わりました」
とのエルフ兵の言葉に、頷きを返し“フォレスト”への帰還を宣言した。
帰途への馬車の中、
ファルディーンの頭の中では様々な疑問や不安が渦巻いているのだった。




