第一話 ルゼリアはつらいよ⑧
“フォレスト”内謁見の間にて、
国主ミレイアとボルカンはガルディア帝国の使者と相対していた。
皇帝レギウス三世の親書を携えて、やって来たのだ。
「親愛なるルゼリアの国主ミレイア殿。
此度の大戦、魔王ノクスの蛮行、目に余る。
今こそ五大国、手を携え事に当たらん。
ついては帝国の“ゴーレム部隊”を遣わす。
見事危難を切り抜ける事を願う。
――ガルディア帝国皇帝アウレリウス・レギウス三世」
書状を読み上げた使者が言う。
「すでに“ゴーレム部隊”を各ダンジョンに派遣しております。ご決断を」
立ったまま、こちらから目を動かさない使者。
ボルカンと共に沈黙していたミレイアだったが、
「皇帝陛下の御厚情、痛み入ります。
早速、お情けに縋らせていただくこととします。
使者殿も遠路ご苦労でした。皇帝陛下によろしくお伝えください」
そう言って、帝国の使者を帰らせた。
「早いの」ボルカンが眉を寄せる。
「しかし、こちらも手が足りないのは事実。
皇帝陛下の力に頼るとしましょう。……今は」
そう言って世界樹へと振り返るミレイア。
その表情はいつもの微笑みでは無かった。
《穿山古神殿》。ルゼリア北方に連なる山岳の一つ。そこに山を削り作られた古い神社があった。古くから打ち捨てられた、そこはダンジョンと化していた。
そこへファルディーンたち“魔術部隊”の馬車が辿り着いた。
「皆、魔力は回復しておるな?」
頷く“魔術部隊”の面々を見渡し、ファルディーンが言った。
「帝国の“ゴーレム部隊”とやらが先行しているらしい。合流を急ぐぞ」
ファルディーンたち“魔術部隊”が内部の広間へ侵入するが、
「むぅここにもいない。随分奥へと進んでおるようだな」
中央に下へと向かう階段が見える。
「ここは、らせん状に地下へと向かう構造。
ここからでは見えんな。追うぞ」
息を殺し、進む“魔術部隊”。
時折ある広い空間には戦闘の跡が見える。
焼け焦げた壁や、切り刻まれた魔獣。
砕かれた骨が打ち捨てられている。
「もうすぐコアの間。ここまで進んでおったとは」
ファルディーンが唸る。
そして見えてきた。コアの間への入り口。
剣戟の音や魔獣の咆哮が聞こえてきた。
「戦闘準備!」
ファルディーンの声と共に陣を構える“魔術部隊”。
三人一組の隊を作り、それぞれ杖を構える。
いつでも詠唱を始められる態勢で、中へと足を踏み入れた。
中では中央にコアが見えた。
時折黒い稲光が走り、辺りに触手を伸ばしている。
コアの前にはファルディーンの二倍は上背のある鬼、
オーガが咆哮を上げていた。
「何故ゴーレムがそちらにいる!しかもこの数」
オーガがゴーレムと打ち合う様を見ていたファルディーン。
その姿に気が付いた黒い全身鎧の男が振り返った。
「おお、あなたがファルディーン卿ですね。
私はガルディア帝国幕僚本部将軍、クロロノート。
そしてあれが我が帝国の誇る“ゴーレム部隊”です」
クロロノートの言葉に頷きを返し、ファルディーンが言った。
「クロロノート殿、助力感謝する。
しかし帝国の兵士の姿が見当たらんな。もしや途中で負傷を」
その言葉にクロロノートが苦笑を返す。
「いえ、ここへ来た士官は私のみ。
あとは10体の“GG13”、ゴーレムだけですよ」
コア前の激戦、オーガやコアから次々と生まれる魔獣たち。
それらと戦う“ゴーレム部隊”の姿にファルディーンは息を呑むのだった。




