第一話 ルゼリアはつらいよ⑥
小高い丘の上、
《双子の迷宮》が見渡せるそこにパトラが座っている。
そのパトラに次々と事後処理の報告が入る。残っていた魔獣の掃討が完了。《双子の迷宮》その一つ、右側のコアを完全な破壊に成功。左側のコアも最低限の処理が済んだ事。
それらを聞きパトラは尋ねた。
「ふむ、こちらの被害は?」
跪く伝令が告げる。
「は、“勇者”殿の救援のおかげで、死者は0。
負傷者も、リラ殿の力を借りて目下治療中です」
その言葉にパトラは、ふぅと息をついた。
そこへ寅二郎たちがやって来た。
「大丈夫か?パトラ」
「ああ、おかげさまでな」
寅二郎の声に答えたパトラが、立ちあがった。
「お前たちの救援、本当に助かった。
リラも治療に駆け回ってくれたと聞いている。
獣人族を代表して礼を言う」
そう言って、頭を下げた。
「いえ、そんな」リラは恐縮し、寅二郎たちも微笑んだ。
しかし、とシドがパトラに尋ねる。
「パトラ様、その、体の方は大丈夫ですか?
“白虎化”は禁忌の業だと聞きましたが……」
寅二郎も目を細めるが、
「ああ、大丈夫。この通りだ。今は大丈夫。
それに“白虎化”は切り札。使わないで済むに越したことは無い」
「もう、使うなよ?」寅二郎はパトラと視線を合わせる。
「ああ、余程のことが無い限り使わないさ。
私には頼りになる仲間がいることだしな」
パトラは眼下で事後処理に当たる金虎族、
そして寅二郎たちを見回す。
「それにトラジロウ、お前が魔王を倒してくれるのだろう?」
そう言ってパトラは微笑みを返した。
(“その時”が来れば分からんがな……)
そんなパトラの内心を見抜いたのか、寅二郎が空を見上げた。
「ちぇ、そんな顔見せられたら何も言えねえだろうがよ」
「今は私の事より、世界の事だろう?」
パトラのその言葉通り、魔王の陰謀は始まったばかり。
寅二郎の見上げた空も、雲が早く流れていく。
ルゼリアの“魔術部隊”総監で“森と理の均衡者”、
ファルディーン・アウレルもまた戦場に立っているのだった。




